
微熱に疼く慕情
第4章 【錯乱していく激情】
「帰りたい……帰して……うっ…うぅっ…」
もうこんな自分は嫌いだ
2人には見られたくなかった
愚かで、滑稽な姿の私………
捨てられて当然な私………
1秒でも早くこの場所から去りたかった
支えられながら黒崎さんの車に乗り込む
凄く心配されたけど、頑なに帰ると貫き通した
時折、明島さんをフォローしていたけど
耳に残る事はなかった
流れる夜の景色をボーッと見つめながら
車内の時計では夜中の1時に差し掛かるところを横目で確認した
何か話し掛けていたかも知れない
話す事もなく静かに窓の外を眺めている
助手席側の扉が開き、シートベルトを外された私は
再び黒崎さんに支えられながら歩き出す
「部屋番号教えて」と言われて教えようとした時、
また私の名前を呼ぶ声がして顔を上げる
駆け寄って来たのは、数時間前まで一緒に居た大智だった
ホッとしたのかも知れない
私から黒崎さんを離れ、大智の元へ歩み寄る
フラフラな私を支えてくれるも黒崎さんに食ってかかるから止めるの
「大智、何も聞かないで……ちゃんと大智の元に帰って来たから部屋まで連れてって」
「わ、わかったよ」と渋々諦めてくれた大智と、
「宜しくお願いします」と頭を下げる黒崎さん
見えなくなるまできっと頭を上げなかっただろう
「一体何があったんだよ」って聞いてくる大智にキスをした
お酒の匂いなんてしないだろうけど飲んで酔ったフリをする
「記憶なくす前にちゃんと帰るって言ったんだよ……大智と約束したから……偉い?」
「う、うん……連絡ないからマジですっぽかされるって思ってた」
「ひどーい、帰って来たのに……」
「無理でも何でも良いからって思ってマンションまで来ちゃったんだ」
「うん……それでもだいぶ待ったよね、ごめん…」
