
微熱に疼く慕情
第5章 【陶酔させてく純情】
「……えっ?」
「何か、大丈夫そうじゃなかったから追い掛けて来ちゃった……すみません」
「あ……大丈夫ですよ?」
「そうっすか!なら、良かったです、俺の見間違えですね」
「え…?」
「横顔が、泣いてそうに見えたんで」
なに…?この子……チャラいくせに今は何でそんな優しい声してんの…?
営業部の田中さん……
そこに、遅れてやって来た先輩………
なに、このトライアングル……
関係がバレたくないから「気にして頂いてありがとうございます、部屋に戻るだけですから」と背中を向けた
立ち去る瞬間、腕を掴んで引き止められる
「明日、もし目が赤かったり腫れてたりしたら…俺、その時は橘さんの事、放っておきませんよ?」
「え…?」
「なぁーんて!ちょっとドキッとしました?何もないならそれで良いっす!じゃあ、おやすみなさい」
「お……おやすみなさい」
少し早足に……駆け足で去って行く
当然、先輩は今のも見ていて追い掛けてくるだろうね
「待って!」って私を止めて、ゆっくり振り返る
「本当にごめん、あの子とは何にもないし、彼女居るって言ってきたから」
「何がですか?」
「え……怒ってるよね?」
「……別に」
あぁ、まだ頭の中、整理出来てないから
お子ちゃま思考なの、近付かないで
八つ当たりも良いところだ
「ねぇ、待ってよ」
「一旦、部屋に戻ります、また後で」
冷静になりましょう、という意味合いだったのに
「嫌だ」と私の腕を引いてどんどん歩いて行く
「先輩?」って言っても聞く耳を持たない
何でこうなるの?
喧嘩とか仲違いしたいわけじゃないから
距離を置こうとしたのに
それを拒まれたらきっと違った結果に繋がるんじゃないかって……
