
微熱に疼く慕情
第8章 【壊れていく劣情】
その可愛い看護師さんは女性看護師と2人でよく来ていた
採血が上手くいかなくて3本目でやっと採れてめちゃくちゃ謝られた
女性看護師に「大丈夫です、お世話になってるのでこれくらいは」って笑顔見せると堕ちたかな?
やっと笑えるようにもなったんだよ、覇気も出てきたでしょ?
許可も出たから院内散歩も出来るし、栄養状態も戻りつつある
朝一の検温や血圧もウトウトしながら受けてる
時々寝惚けて手を握ってしまうのは許してね
真っ赤になってるの気付いてるんだ
女性看護師だと(ちぇ、今日は違うのか)なんて思ったり
キミが来てくれると嬉しい
「一華、後はもう持ってくるのない?」
「うん、ごめんね、頼んじゃって」
「良いよ、これくらいさせてよ」
お見舞いに来てくれる先輩に合鍵を渡して着替えを持ってきてもらった
何だかソワソワしてるから何かあったのかと思えば
「親御さんは来てたりする?」って当たり前のように聞いてくる
入院してるから?
遠いし、身体も丈夫じゃないから…と適当に答える
それ以上は聞かないでって思う
「いや、もし来てたなら挨拶出来ればなって思っただけだから……うん、またの機会の方が良さそうだね」
挨拶…?
なんの…?
付き合ってます、的な?
結婚も視野に入れてます、とか?
苦笑いするしかなかった
「そうだね、またの方が良さそう」
「うんうん、俺はいつでも合わせれるから」
この嘘、どこまでつき続けなきゃいけないかな
本当は◯◯に親なんて住んでない
ぎっくり腰でもない
何処で何をして、ましてや生きてるのかさえわからない
それくらい疎遠だし、縁も切れてる
思い出したくもない過去だから誰にも話してない
柔らかい顔でズカズカ踏み込んで来ないでよ……
