テキストサイズ

微熱に疼く慕情

第9章 【歪んだ世界でも凛として…】






「私こそごめん……さっきのね、しつこいからついいつもの手を使っちゃったの」


「いつもの手?」


「近過ぎて怒った?」


「めちゃくちゃ焦りました……僕が居るのにって」


「なんて話してたと思う?」


「え…?何ですか?」



さっきのように同じ手法で引き寄せたら答え合わせの耳打ち……



「今の彼氏しか興味ないの、ごめんね…」



ゼロ距離で囁くと結構効き目あるんだよ
ドキッとさせて諦めさせるやつ
時々つけ上がる人も居るけどキミに興味ないよって事は伝えてる
鏡見て出直して来てねって意味合いなんだけど、それ言うとトラブルにもなりかねないからね



あれ?また真っ赤にしちゃった?



「あ、ごめん、彼氏じゃないけどそう伝えた方が向こうも引き下がるかなって」


「僕はそうなると嬉しいです」


「え…?」



ハイ、釣れた………水族館で、
なんちゃって



「こんな時に言うのは卑怯かも知れないけど、僕は最初からそのつもりです」



真っ赤なくせに言う事は言う
まぁ、最初に仕掛けたのは私なんだよね
あの時は我慢出来なかったと言うか……



「患者に恋する事あるの?」


「元、患者でしょ?僕は一華さんだから惹かれてる」


「キスしちゃったから?」


「忘れられないですよ、一生」


「忘れてよ……あんなの」


「無理です」



あぁ、もうどうしちゃおうかな?
愉しいね
私が見られてるからって手を引いてその場から離れる
死角になるようなところに連れて行かれちゃって、なんと大胆な……



「僕が言った事は全部本気だけど、困らせたくはないのですぐ返事しようとは思わないでください」


「は、はい…」


「頭の隅にでも置いといてくれれば…」


「わかった」


「あ、でも、忘れないで、本気でアプローチしますから」


「……了解です」



え、可愛い……あざといよ、旺志郎くん




ストーリーメニュー

TOPTOPへ