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微熱に疼く慕情

第11章 【普遍的な真理】






書類関係の締め日はこぞって営業課がギリギリを狙って提出しに来る
いつも余裕を見て提出してくれるエースの谷川さんさえ時々こうして直接持って来る
「ごめんなさい」の一言も且つ丁寧で好印象
でも、鉄仮面のポーカーフェイスで通してきている私はどんな時でもサッと受け取り塩対応だ
愛嬌なんてものはない



ずっとパソコンとにらめっこが続くと眼精疲労にもなる
伊達メガネを外し、目薬を差す
その瞬間に部長に呼ばれて席を外した
月末月初はとにかく忙しい部署だ
どうにかして定時上がりを目指す私には1秒たりとも無駄にはしたくない
他の人も業務に追われているはずなのに一瞬手が止まってしまうのは、部長の元へ行った私がメガネをしていなかったから…?



「部長?こちらの入力でしたらメールで送っています、共有のところに入ってるはずですが」



部長でさえも時が止まったようで……
「え、どこ?」って言うから「失礼します」とマウスでクリックして開く
いつも2つ3つ先の仕事熟してるんだから抜かりはないですよ
「他の業務はありますか?」
こう聞いて有無を言わさない
席に戻る時も周りの視線を感じても何とも思わない
せいぜい惚れてろって思う
その為のアイテムだったし
少しずつ素顔を見せる事で煩わしい女子軍団も黙るようになってきた



「あの、コレも……間に合いますか?」



メガネを掛ける前に再び谷川さんが戻って来た
営業課のエース、稼ぎ柱、センター分けのモテ男
清潔感あるし物腰も柔らかい感じがして、この前も部下に優しく指導しているところを目撃していた
抜かりがないところは似ているのかなって思っていたけど、今回はこんなギリギリでどうしたんだろうって……



期日自体は間に合っているんだけど受け取るだけ受け取り会釈で終わらせる
この人を狙ってる人はたくさん居るので避けてきた






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