
微熱に疼く慕情
第2章 【動き出す熱情】
お願い…って縋るような目、
別れた時はそんな目しなかったくせに……
どちらかと言えば、私の方が泣いていたんだよ
「じゃあ、いつかまた料理教えてよ……頑張るから」
それ頼むの、私で合ってる…?
まぁ、お互い、次の相手が見つかるまでは……
私は当分作らないだろうけど
「気が向いたらね」
「わ、それ絶対向かないやつじゃん」
「ふふ、よくわかってるね」
「一華の、邪魔にならない程度に一緒に居たい…」
「邪魔だよ、元カレなんて」
「酷い……」
「帰り、気をつけてね」
「うん、一華も早く入って」
「はーい、おやすみ」
「あっ!」
「え、なに?」
「ハグとか、ありですか?」
ゆっくり手を広げて、何を待ち構えているんだ?
「馬鹿じゃないの」と笑ってあげた
くしゃみするし、鼻声だし、だから送らなくて良いって言ったのに
スルーしてマンションに入ろうとしたら
「寒い寒い!え、どうしよう、ハグは?」
「こっち来ないでよ、バカ」
近くまで来て手を広げる大智が「お願いします!」って大きい声出すから「バカ、声大きいよ」とコートを引き寄せた
別にハグしようとしてそうなったわけじゃない
完全なる大智の思惑通りだったわけだ
長い…って
自分から離れたけど満足げな大智は
「これで明日からも頑張れる」って無理やり笑ってんの
見逃せば良いのにね
ポケットに入れてたカイロを手渡す
「これあげる……それと、抱えきれなくなる前に誰かを頼って?それが私だって言うなら、少しの間だけなら…力になるから」
