
キセキ
第15章 Vol.15〜沈黙の恋心
【Vol.15:She chooses divorce for the sake of her beloved partner】
「浩市さん、離婚してください」
1年前に妻に言われた。
好きな人が出来たから・・・ということだった。
私は40歳。
妻は私より5歳年上の45歳。
結婚して、10年目の出来事。
青天の霹靂とは、このことだった。
思い当たることはない。
喧嘩をしたか?
していない・・・
同僚に相談したら、
喧嘩一つしないのは、
コミュニケーション不足だったのでは?と
真顔で言われて、
苦しくなった。
妻の名前だけがサインされた離婚届を前にして、
いよいよ頭が真っ白になってしまって、
私はうまく物が考えられなかった。
ただ、不思議と食い下がる気持ちにはならなかった。
彼女の笑顔は「すでに整理ができています」といった風情だったから。
自分がみっともなく食い下がることは、できなかった。
離婚届が受理されると、
晴れ晴れとした顔をした妻は、
さっさと自分の荷物をまとめて、
家から出ていった。
後には、やけにがらんとした部屋と、
ぽっかり空いた胸の空白だけが残った。
「あなたも好きな人を
早く見つけてね」
それが妻の最後の言葉だった。
1か月経って、
2か月経って、
3か月目が来て、夏の気配が漂い始めた頃
やっと、私は地面に足がついた感じがした。
生活は、うまく回り始めた。
自分用の食事を作ることは、
もともと一人暮らしをしていたので、思い出せば普通にこなせた
ただ、自分のためだけに作る食事が
こんなにも味気ないものだっただろうかと、
そう思った。
「浩市さん、離婚してください」
1年前に妻に言われた。
好きな人が出来たから・・・ということだった。
私は40歳。
妻は私より5歳年上の45歳。
結婚して、10年目の出来事。
青天の霹靂とは、このことだった。
思い当たることはない。
喧嘩をしたか?
していない・・・
同僚に相談したら、
喧嘩一つしないのは、
コミュニケーション不足だったのでは?と
真顔で言われて、
苦しくなった。
妻の名前だけがサインされた離婚届を前にして、
いよいよ頭が真っ白になってしまって、
私はうまく物が考えられなかった。
ただ、不思議と食い下がる気持ちにはならなかった。
彼女の笑顔は「すでに整理ができています」といった風情だったから。
自分がみっともなく食い下がることは、できなかった。
離婚届が受理されると、
晴れ晴れとした顔をした妻は、
さっさと自分の荷物をまとめて、
家から出ていった。
後には、やけにがらんとした部屋と、
ぽっかり空いた胸の空白だけが残った。
「あなたも好きな人を
早く見つけてね」
それが妻の最後の言葉だった。
1か月経って、
2か月経って、
3か月目が来て、夏の気配が漂い始めた頃
やっと、私は地面に足がついた感じがした。
生活は、うまく回り始めた。
自分用の食事を作ることは、
もともと一人暮らしをしていたので、思い出せば普通にこなせた
ただ、自分のためだけに作る食事が
こんなにも味気ないものだっただろうかと、
そう思った。
