
キセキ
第16章 Vol.16〜空白の時間
【Vol.16:He never forgets the most important thing】
熟年離婚だった。
私が60、彼が52のこと。
娘が成人したと同時に、離婚を切り出された。
戸惑いはしたけれども、想定の範囲内だった。
というより、絶対にこうなると思っていた。
私は彼に、優しくなかった。
年下の彼で羨ましがられつつ入籍
諦めかけていた子供も持つことができた。
最初は私のほうが好きだった、と思う。
でも、結婚して、一緒に暮らすようになって、
どうにも我慢できないことが増えていった。
年下の彼は、家事は良くしてくれたし、子育てにも積極的、
いい旦那さんだね、と友達にも言われていたけれども、
私の目から見ると、
段取りが悪かったし、楽観的に過ぎるし、
出たとこ勝負で、毎日呑気に暮らしている感じが、本当に嫌だった。
私が一生懸命話しても、その話はあんまり聞いてくれていないみたいで
すぐに忘れてしまうみたいだったのも腹が立った。
そのくせ、色んな人に親切にする。
その行動がいちいち私を苛立たせる。
だから、言葉がきつくなる、やることなすこと気に食わなくて
何をされても文句が先に出た。
何度も彼は家を出て、何度も離婚の話が出たけれど、
娘のことがあるし、無責任だと言って、その都度、その話はなんとなく流れていった。
私は謝らなかったけれど、
彼は私が傷ついた顔をすると、何度も謝っていて、
それがまた、私は腹が立つ理由になっていた。
でも、やっぱり彼は我慢していたみたいで、
娘が成人を迎えた日、とうとう離婚届を出すと言ってきた。
そして、彼は言った。
『君の言葉は痛かった
だから離婚したらもう電話とかそういうのはなしにしてほしい』
その言葉に、私は軽くめまいを覚える。
それは怒りだったと思った。
私の方こそ何度も傷つけられたのに!と
そんな私の気も知らないで、彼は最後にこう付け加えた。
『でも、もし、どうしても寂しい時があったら、
その時だけは連絡してきて』
そんなこと、するわけがない
その時、私は彼に、そう言った。
熟年離婚だった。
私が60、彼が52のこと。
娘が成人したと同時に、離婚を切り出された。
戸惑いはしたけれども、想定の範囲内だった。
というより、絶対にこうなると思っていた。
私は彼に、優しくなかった。
年下の彼で羨ましがられつつ入籍
諦めかけていた子供も持つことができた。
最初は私のほうが好きだった、と思う。
でも、結婚して、一緒に暮らすようになって、
どうにも我慢できないことが増えていった。
年下の彼は、家事は良くしてくれたし、子育てにも積極的、
いい旦那さんだね、と友達にも言われていたけれども、
私の目から見ると、
段取りが悪かったし、楽観的に過ぎるし、
出たとこ勝負で、毎日呑気に暮らしている感じが、本当に嫌だった。
私が一生懸命話しても、その話はあんまり聞いてくれていないみたいで
すぐに忘れてしまうみたいだったのも腹が立った。
そのくせ、色んな人に親切にする。
その行動がいちいち私を苛立たせる。
だから、言葉がきつくなる、やることなすこと気に食わなくて
何をされても文句が先に出た。
何度も彼は家を出て、何度も離婚の話が出たけれど、
娘のことがあるし、無責任だと言って、その都度、その話はなんとなく流れていった。
私は謝らなかったけれど、
彼は私が傷ついた顔をすると、何度も謝っていて、
それがまた、私は腹が立つ理由になっていた。
でも、やっぱり彼は我慢していたみたいで、
娘が成人を迎えた日、とうとう離婚届を出すと言ってきた。
そして、彼は言った。
『君の言葉は痛かった
だから離婚したらもう電話とかそういうのはなしにしてほしい』
その言葉に、私は軽くめまいを覚える。
それは怒りだったと思った。
私の方こそ何度も傷つけられたのに!と
そんな私の気も知らないで、彼は最後にこう付け加えた。
『でも、もし、どうしても寂しい時があったら、
その時だけは連絡してきて』
そんなこと、するわけがない
その時、私は彼に、そう言った。
