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キセキ

第15章 Vol.15〜沈黙の恋心

☆☆☆
墓前に花を供えた。
 お線香に火をつけて、そっと横たえる。

 手を合わせて、目を閉じる。

やっと、いい報告ができるよ。
お姉ちゃん・・・。

2年前、お姉ちゃんが、浩市さんと離婚するって言い出したの、
ほんと、びっくりだったよ。

あんなに仲良かったのにって。
でも、病気だって聞いて、ちょっと納得した。
 いいか悪いかは別として、お姉ちゃんらしいと。

『葉月、私、病気なの。ガンだって。
 あと、1年、もたないって。』

滅多に泣かないお姉ちゃんが、ぼろぼろ泣いていた。
 でも、その涙は、自分のためじゃなかったね。
旦那さん・・・浩市さんに申し訳ないって。

『私が突然死んじゃったら、あの人のことだ、
 きっとずっとずっと私を心にしまっちゃう。
 二度と、恋ができなくなっちゃう、だから・・・』

だから、病気のことを黙って別れようって。

結果的に言って、お姉ちゃんの作戦は成功だったみたい。
 浩市さん、また結婚したよ。
多分、幸せ。

ちょっとだけ、手伝っちゃったけど、
 大体お姉ちゃんの予想通り。

すごいよね・・・。すごい、よく浩市さんのこと、分かっていた。

多分、浩市さん、今、幸せ・・・だよ
キセキみたい

だけど・・・
でもね、今でも、私、お姉ちゃんたちが離婚したの、本当に正しかったかどうか、わかんないよ。
 浩市さん、最後までお姉ちゃんといたかったんじゃないかなって。
お姉ちゃん、浩市さんといたかったんじゃないかって。

だから、ひとつだけ、恨み言。
 お姉ちゃん、ひどいよ。
私、この秘密、ずっとずっと抱えてなきゃいけないじゃない。

それだけ、恨み言。
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