
小さい王さま
第4章 4・ほんの少しだけだけど
さらに半日ほど走ってへとへとになったころ、鼠はようやく丘の上に到着しました。
ところが丘には、すでに虎が到着していました。鼠はとっさに、近くの岩陰に身を隠しました。
丘の上には細くて高い、石がそびえ立っています。月の花が割いているのはそのてっぺん。石を登らなければ月の花を取ることはできません。虎はどうやらその石を見上げて悩んでいる様子です。
鼠は考えました。虎の体は大きいから、あの石に登ったら石が壊れてしまう、だから悩んでいるんだろう。
その点、鼠は有利です。ちょこまかと動くことは得意ですし、鼠の小さい体ならば、あの石を登っても石が壊れることはありません。それに小さいので身を隠して近づくことも簡単です。
鼠は用心しながら、そうっと岩陰から出ました。草の間に身を隠しながら音を立てないように石に近づいていきます。
石を見上げている虎の背後へ迫り、その横をすり抜け、やっとの思いで石の根本にたどり着きました。あとは一気に石を駆け上るだけです。
ところが――。
「おい鼠」
低い声に呼び止められて鼠はすくみあがりました。おそるおそる振り返ると、自分を見下ろしている虎の姿がありました。
「見つかっていないと思っていたのか」
「い、いやあ、そういうわけじゃ」
鼠は石に背中を付けてつくり笑いを浮かべました。いつ虎が襲ってきても逃げられるようにと左右に目をやってたしかめます。
「王さまになるのは俺だ」
ところが丘には、すでに虎が到着していました。鼠はとっさに、近くの岩陰に身を隠しました。
丘の上には細くて高い、石がそびえ立っています。月の花が割いているのはそのてっぺん。石を登らなければ月の花を取ることはできません。虎はどうやらその石を見上げて悩んでいる様子です。
鼠は考えました。虎の体は大きいから、あの石に登ったら石が壊れてしまう、だから悩んでいるんだろう。
その点、鼠は有利です。ちょこまかと動くことは得意ですし、鼠の小さい体ならば、あの石を登っても石が壊れることはありません。それに小さいので身を隠して近づくことも簡単です。
鼠は用心しながら、そうっと岩陰から出ました。草の間に身を隠しながら音を立てないように石に近づいていきます。
石を見上げている虎の背後へ迫り、その横をすり抜け、やっとの思いで石の根本にたどり着きました。あとは一気に石を駆け上るだけです。
ところが――。
「おい鼠」
低い声に呼び止められて鼠はすくみあがりました。おそるおそる振り返ると、自分を見下ろしている虎の姿がありました。
「見つかっていないと思っていたのか」
「い、いやあ、そういうわけじゃ」
鼠は石に背中を付けてつくり笑いを浮かべました。いつ虎が襲ってきても逃げられるようにと左右に目をやってたしかめます。
「王さまになるのは俺だ」
