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小さい王さま

第6章 6・虎の罪

 いくら思い出してみても、虎が悪さをしたことは浮かんできませんでした。たしかに言葉は乱暴だし声は大きいしすぐに怒鳴ります。おまけに目が赤くて怖いところがあります。

 でも、たとえばものを盗んだり嘘をついてだましたりといったことはありません。

「何をいうか虎よ。おまえは熊の腕に噛みついてけがをさせたじゃないか」

 猿の言葉に虎は、寝転んだまま泣きながら答えました。

「あのときは山羊がはじめに角で突いてきたんじゃないかよ。やられた俺だけが我慢していろっていうのかよ」

「ふむ」

 猿は言い返せません。鼠も、そのときのことを思い出します。

 虎の言う通り、先にやられたのは虎です。熊の腕に噛みついてしまったのはたしかですが、それも勢いあまってのこと。虎だけを責めることは鼠にはできませんでした。

 鼠はためしにきいてみました。

「虎さんはどうして、王さまになりたかったんですか」

 虎はおいおい泣きながら答えます。

「おまえらがよってたかって俺をのけ者にするからだろうが。ここでひとつ王さまにでもならなければ俺はこの森にいられなくなると思ったんだよ」

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