テキストサイズ

小さい王さま

第6章 6・虎の罪

 それを聴いて鼠はようやく虎の行動に納得しました。丘の上では傷だらけになりながらも必死に熊と戦ったのも、そして鼠が取った月の花を奪おうとしたのも、この森に居場所をみつけるためだったのです。もしみんなが虎を怖がって除け者にしていなければ、虎も熊と戦ったり、鼠から月の花を奪おうとしたりなどしなかったでしょう。

「さあ、虎をどうする、鼠よ」

 猿が尋ねました。

「僕が、決めるの?」

「そうさ。なにしろ鼠は、もう王さまなのだから」

 そしてハッとした表情を見せたかと思うと、猿はするすると木から降りてきて、鼠の前にひざまづきました。

「失礼な喋り方をしてしまったことをお許しください、王さま」

 それにならうように、ほかの動物たちもその場にうずくまりました。

 虎だけは寝転がったまま、まだ泣いています。その虎と、鼠の目が合いました。

「虎さん。僕たちは虎さんが怖いと勝手に思い込んでいたようです。それで除け者にしてしまっていました。しかし虎さんは何も悪いことはしていません。それに、虎さんの目が赤いわけもわかった気がします。誰にも見られていないところで、泣いていたのではないですか?」

 虎はこくりとうなずきました。

「勝手な思い込みで除け者にしてしまったことを、王として謝ります。ごめんなさい」

 次に鼠は、熊に尋ねました。

「熊さん、あなたは虎と傷つけ合いましたね。熊さんは虎さんをどう思いますか」

 熊は大きな体を丸くして答えました。

「虎がそれほど必死だったとも知らなかったよ。除け者にしていたことは、悪かったと思うよ」

 続いて、今度は山羊が言いました。

「私も、いきなり角で突いたりして悪いことしたわ。ごめんなさい、虎さん」

 ほかの動物たちも口々に、虎をのけ者にしていたことを謝ります。

 その声がおさまってから、鼠は虎にききました。

「みんなはこう言っているけど、虎さんはみんなをどう思いますか」

「俺はこの森にいられるならそれでいいよ」

 虎はようやく起きあがって、それから熊に向かって言いました。

「勢いがあまったからとはいえ、噛んじまって悪かったな」

「それじゃあ」

 鼠は机の上にぴょんと飛び乗って宣言しました。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ