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小さい王さま

第2章 2・争い

 その翌日のことです。動物たちは森の広場に集まって話し合いを開きました。王さまを決めるための話し合いです。

 大きな木の机をたくさんの動物たちが囲んでいる中、まっさきに声をあげたのは熊でした。

「僕が王さまになったら、森の外から獲物をとってきて、みんなにわけてあげることができるよ」

 力が強く、気のやさしい熊に、ほかの動物たちが拍手を送りました。ですが、もう一頭、声をあげた動物がいました。

「私は薬草にくわしいから、みんなが体を悪くしたときに治してあげることができるわよ」

 そう言ったのは山羊でした。動物たちにとっては食べ物も大事ですが、同じくらいに怪我や病気を治すことも大事です。動物たちは山羊にも拍手を送りました。

 さらにもう一頭、名乗りをあげた動物がいました。

「獲物だったら俺もとれるぜ」

 がらがらした声で怒鳴ったのは虎です。虎は机を囲む仲間を押しのけて大声でさらに訴えました。

「それに熊よりも度胸がある。敵が攻めてきたらおまえらを守ってやることもできる。悪さをするやつがいたらひねりつぶしてやることもできる。王にふさわしいのは俺だろう」

 目をらんらんと赤く光らせて乱暴な言葉を撒き散らす虎に、動物たちは拍手を送ることはありませんでした。怖いのです。

 熊も大きな体を縮みあがらせながら、それでも精いっぱいといった様子で言い返しました。

「そうやってみんなをおどかす虎が王さまになったらみんな困るよ。僕こそが王さまにふさわしいね」

 山羊も負けてはいません。

「そうやってけんかをしてけがをしたら薬草が必要よ。薬草で怪我を癒せる私こそが王さまにふさわしいわ」

 澄まし顔の山羊に向かって、虎が怒鳴ります。

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