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小さい王さま

第2章 2・争い

「戦うことも獲物をとることもできない山羊は黙ってろ」

「私だって戦えるわよ」

 山羊は虎の横腹を角でつきました。

「この野郎」

 怒った虎が牙をむき出して山羊に噛みつこうとします。

「やめなよ、ふたりとも」

 山羊と虎の間に熊が入って止めました。しかし勢いづいた虎はきゅうに止まることができず、熊の腕に噛みついてしまいました。

「痛い! よくもやったな。僕だって怒るんだぞ」

 熊は鋭い爪を出して虎と向き合います。

 三頭の激しい争いを、小さな体をさらに小さくして見つめていた動物がいました。

 鼠です。

 森の中でもっとも小さな動物です。

 鼠はおびえながら考えました。このままでは、力の強いものが王さまになってしまう。力の弱い動物は言いなりなるしかない。とくに僕なんか⋯⋯。

 そうなってはならないと思った鼠は思いきって声をあげました。

「みんな、待った」

 机の上にぴょんと乗ります。けんかをしていた山羊と熊と虎が動きを止め、鼠に目を向けました。机を囲んでいるほかの動物たちも鼠に注目します。

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