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小さい王さま

第2章 2・争い

 鼠はみんなに向かって言いました。

「精霊王さまが病気で寝込んでいるときに、けんかなんかしている場合じゃない。どうかな、ここは精霊王さまが好きだった〝月の花〟を持ってきたものを王さまにするっていうのは」

「それはいい考えだ」

 鼠の考えに賛成したのは、物知りの猿でした。

「王さまを決めるのにけんかが起きたと知れば、精霊王さまも悲しむだろう。それに月の花にはどんな病気も治す力があるという。精霊王さまのご病気を治してさしあげることもできるかもしれない」

 それをきっかけに、鼠の考えに賛成する声がちらほらとあがりはじめました。声はだんだんと大きくなっていき、やがて大合唱となりました。

 虎も熊も山羊も、動物たちみんなの声には反対できず、しぶしぶ、

「そうするか」

 とうなずいたのでした。

 三頭が賛成したので、大合唱に拍手が混じりました。

 山羊が熊に声をかけました。

「ひどい怪我をしてしまいましたわね。私のせいで、ごめんなさい」

 山羊はそばに生えていた草を噛みちぎると、口の中ですりつぶして、ぬり薬にし、舌で熊の腕にぬってやりました。熊は薬をぬってもらいながら言いました。

「きみがあやまる必要はないよ。手加減を知らない虎がいけないんだ」

 その二頭のやり取りを見ていた何頭かの動物は、恐れと憎しみのこもった目を虎に向けました。

 しばらくすると大合唱と拍手がおさまりました。

 静かになったところで、猿がみんなに問いかけました。

「では、月の花を誰が取ってくるかね」

「僕が行きます!」

 鼠が、真っ先に手を挙げました。続いて、山羊、その次に熊、最後に虎が名乗り出ました。

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