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小さい王さま

第3章 3・水はないけど

 月の花がある場所は、森の北にある丘のてっぺんです。

 そこを目指して、鼠と熊と虎と山羊は、いっせいに駆け出しました。虎と熊は一直線に丘へ向かって駆け出しました。途中に生えている木などなんのその、持ち前の大きな体でなぎ倒しながら進みます。しかし腕に傷を負った熊が少しだけ遅れていました。

 山羊は森をさけ、やや遠回りをして岩がたくさん積み重なっているところをぴょんぴょんと飛んで丘を目指していきます。

 鼠はというと、歩幅が狭いのでいくら一生懸命走っても他の三頭にはかないません。そこでこっそり、山羊の背中に乗っているのでした。

 山羊は虎と熊をしのぐ速さで進んでいます。ところがもう少しというところで急に足を止めたかと思うと、岩場から森の中へ入って、茂みの中に横たわってしまったのです。

 このままでは熊と虎に負けてしまいます。といって、山羊を放っておくこともできません。

 鼠は山羊の背中から飛び降りて、耳の近くで尋ねました。

「どうしたんですか、急に寝転んでしまって」

 まぶたを閉じていた山羊が、ぎょろっと目を開きました。

「おや、鼠じゃないの。どうしてこんなところにいるのよ」

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