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磯撫デ

第4章 取材ノート②

◯ 午後、鈴本亭

最初、出てきた娘婿からは『義父は留守』と言われたが、奥からオオイと声がしたのを聞いて、勘違いだったと通してくれた。

鈴本氏は4年前に細君を亡くされてからは運送業を営む娘夫婦と小学校6年生の孫と同居しているとのこと。娘婿のHによると、義母を失くしてからボケが入っている、とのことだった。確かにところどころ聞き取りにくい発話、記憶の混同などが見られるが、会話自体はしっかりしており、取材に耐えると判断した。

以下、鈴本氏との取材メモ
>このあたりの古い話、変わった話をご存じないですか?
「・・・変わった?」
>【イソナデ】について、なにかご存知なことはありますか?
「いそなで?・・・ああ!磯撫デ・・・ありゃあ、恐ろしいものじゃ」
>恐ろしいとは?
「ああ、恐ろしい、恐ろしい・・・Gがしっかりしないから」
>しっかりとは?
「間違えたんだ・・・なあ、ありゃやっちゃいかんことやった
 止めりゃよかったと婆さんと言っていたんだが」
>それはセオリメ祭がなくなったのと関係がありますか?
「ああ、ああ・・・そうだとも
 用をなさなくなった・・・そうだなあ・・・Gも一所懸命やったが」
>何を一所懸命されたんですか?
「くわしうは知らん・・・知らん」
>・・・では、最後に・・・I島とかS町で人が海に飲まれて消えたことはご存知ですか?
「ああ・・・そりゃ【イソナデ】じゃ」

ここで、『父も疲れてしまうので』と娘が鈴本氏を奥の間に連れて行ってしまった。
ちなみに、H夫妻にも同じ質問をしたが、特に思い当たることはないと言われた。

娘婿にセオリメ祭のことについて尋ねるが、自分が婿入りしたときには祭はすでにやっていなかった、とのことだった。

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