テキストサイズ

スメンクカーラー

第1章 街工房の少年、ナクト


昼の通りは人だらけだった!


収穫祭の準備やら、新しい神殿の工事やら

歩く人混みをかき分けて数台の馬車が行き交う


新都アケトアテンは交易のど真ん中の街なのだ


ナクトはとんでもない事になってしまった!と膝を震わせた


こんな大人数の中に女王を連れて歩く?

とんでもない!!


「や、やっぱりサンダルを直すのは明日にします……」


「そうなのか?不便だろう?まぁお前が良いと言うのなら私は構わんがな
 メリト、予定変更だそうだ
 何か食事がとれるところを探してくれ」


「はっ!」


「あああああ、違う!違うんだ!?」


どうやらふたりは工房に引き返す気など無さそうだ


市場をキョロキョロしているふたりとトボトボ裸足で歩いているナクトは滑稽な三人組に見えただろう


「あれ?ナクト?ナクトじゃないか!?
 なんだよ、お前サンダルも履かずに?
 なんで女の子連れて歩いてるんだよ!?
 紹介しろよ!!」


3人組の後ろから声をかけてきたのは昨日の飲み友達だ

“紹介だと…?バカがッ!!
 こちら女王さまです!て言えるかよッ!”


ナクトが彼を制止しようとすると背後から冷たい殺気が感じられた


女王を守るためメリトがナイフを取り出そうとカチンと音を立てたのだ!


「待て!殺すな!」


ナクトは思わず声を出してしまった


言ってすぐに“あっ”としまったような声を出してしまう


それは親友に向けられたものだと勘違いされてしまった

「ナクト?紹介してくれって言ってるのに何で俺が女の子を殺すんだよ
 取って食ったりしないって!
 お嬢さんたち、俺はナクトのワルともセトだ
 どこ行くんだい?」


メリトは長衣の下のナイフを下ろした


「セト!あっち言ってろ!親戚を案内してるんだ!親父の使いだよ、ジャマするな!」


セトはなぁんだぁ、とつまらなさそうな態度を取って雑踏の中へ消えていった


はぁぁぁ〜、と深いため息が出る


「おい、街なかで人殺しでもするつもりか?」

「近付かれれば斬りつけるさ、それが私の役目だからな」

後ろの女王も無言でうんうん、と頷いていた


エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白いエモアイコン:共感したエモアイコン:なごんだエモアイコン:怖かった

ストーリーメニュー

TOPTOPへ