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幻想遊園地

第1章 第1話:シンデレラ ―The Real Story―

「そなたの心には硬い硬い氷のような蓋がなされておる
 それは己の力ではどうにもなりますまい
 何かを愛しいと思うことも、ないのではないか?」

王子はこの不思議な老婆の言葉にすっかり魅了されました
たしかにそうでした

空が青く、鳥がさえずっても
自分の心はピクリとも動きませんでした
同じ年の青年が美しい娘に歌を捧げていても
自分は同じことをしようとは思えませんでした
どんな娘を見ても、その娘に触れようとすら思えなかったのです

自分の心はまるで凍りついたようだ、と
王子は感じていました

「それは呪い・・・ぬしは、このままだと一生そのままじゃ
 温かいものに触れられぬ、たった一人で冷たくなって死んでゆくのじゃ」

「そんなのは嫌だ。
 でも、全く心は動かない、
 うれしいことも、腹の立つことも
 悲しいとさえ思わない、
 あなたの言うとおり、自分ではどうすることもできないのです」

占い師はまた水晶玉を覗き込み、そして、言いました
「たったひとつだけ、方法がある
 わしがこれから言う3つのことをすることじゃ
 よいか、必ず言うとおりにするのだ」

「ひとつ目は、今日から7日間、毎日、西の湖の畔の森に狩りに出かけることじゃ
 王宮の共をつけてはいけない、身なりは平民の服で行くことじゃ
 二つ目は、王に言い、国中の娘を集めて舞踏会を開き、そこに必ず出ること
 わしに言われたからなどと、理由を告げてはならない、
 己が言い出したというふうにするのじゃ
 そして、三つ目は、舞踏会の日に、もう一度わしを王宮に呼ぶこと」

王子はわかったと言いました
そして、すぐに王に舞踏会について言いました
それを聞いて王は狂喜乱舞しました
王子がやっと妻を娶る気になったと、そう思ったからです

また、王子は次の日から占い師の言うとおりに狩りに出かけ始めたのでした

狩りに出て5日目のこと
今日は獲物に恵まれませんでした
もともと王子は狩りが好きで、上手でしたが
この日はリス一匹獲れなかったのです

しかも、昼に食べるパンも忘れてしまっていました

「ああ、お腹が空いた・・・」

空腹に耐えかねて森の泉のそばで座り込んでいると
水を汲みに来た村娘と思しき女に会いました

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