テキストサイズ

幻想遊園地

第1章 第1話:シンデレラ ―The Real Story―

王子の間を出ると、
占い師は来たときと同じように、
ゆっくりゆっくりと供の者につれられて、
庭を歩いていきました

「おや・・・おや?」
占い師は、とある親子に目を留めました
目を細めて見る先には、3人の女性がいます
少し年上の女性とおそらくその娘と思しき二人の少女
母親の方の女性はまだおとなしい上品なドレスを着ていましたが、
娘の方は、派手派手しいドレスを
これでもかというほどのリボンで飾り立てていたのでした

「まさか・・・」

占い師は供の者に、ここでもう良いと言うと、
先ほどとは打って変わった素早い足取りで庭を通り抜けました
王宮の石階段を駆け下り、まるで長年住み慣れた家を歩くかのように、厩舎に向かいました

「馬車を出すのです、急ぎなさい」
その声は先程までのしわがれた声ではありませんでした
ハキハキとした若い女性の声です

「え?あ!・・・王妃様!」

馬子は驚きました
めったに外出なさらない王妃が、ボロのような服をまとってきたのです

「どうなさったのです」
「いいから、急ぎなさい。早く走る馬ととびきり上等の馬車を用意しなさい
 それから、ドレスと靴、化粧道具も持ってきなさい」

馬子は大慌てです
王妃の命令なのです
執事長に急いで連絡し、王妃が所望したものを揃えました

すべてのものを馬車に積み込むと、
王妃は御者に言いました

「急ぐのです。この国の将来がかかっています」

御者はこれまでで一番のスピードで王宮の丘を下りました
折しも、街中の殆どの者は王宮にいるので、
馬車はまるで矢のように進むことができました

「王妃様、いったいどうなさったんですか?
 戦争でも起きるんですかい?
 それにその格好は・・・」

「もう、格好にかまっている暇はありません
 一刻も早くあの娘を連れてこなければ
 よもや、王の触れまで破るとは思わなんだ
 なんと吝嗇な女であろうか!」

王妃は歯噛みをしているようでした
御者は町外れにある大きな屋敷につきました
この屋敷はかつて妻をなくした誠実な男性がその娘と住んでおりました
男性が後妻を娶った後に急逝し、
その後は後妻とその娘二人、
それに、もとの男性の娘が住んでいるはずでした

王妃がその家の台所に入り込むと、
そこでは、一人の若い娘が灰だらけになってかまどの掃除をしていたのです
王妃は胸をなでおろしました

ストーリーメニュー

TOPTOPへ