
サム・チェイシング・アフター 18頁完結
第1章 シグナル
「隊長、また例のシグナルがついてきてます」
少年兵ミゲルは焦った声で僚機に連絡する
「このあたりはミノフスキー粒子が薄い、センサーの感度は良好だ
ミゲルは引き継ぎ索敵しながら進め!
俺たちの隊列から離れるなッッ!?
こんなジャングルで迷子になったら二度と基地には戻れないぞッ?」
隊長のバリラーリは士気を高めて、この密林から脱出を試みている
狙撃手担当のエースパイロット、ウォルターは早く帰還して酒を浴びながら女を抱きたかった
「隊長、追跡してくるシグナルはどう見ても敵機だろ?さっさとトラップを仕掛けて排除しちまおうぜ?
ヤツが追ってくるのなら俺たちも基地にはもどれねぇぜ?」
3機のモビルスーツ小隊はジャングルの中を敗走していた
もともとは戦術核を使用され破壊されたジャブロー基地の占拠であったが、待ち伏せしていたネオ・ジオン軍のモビルスーツに排除されてしまっていた
他の部隊はもういない
彼らだけが唯一の生き残りだ
何とかしてベネズエラとの国境近くに隠されている軍事基地まで踏破して、救助を待つしかないのだ
その隠された基地を敵に察知されるわけにもいかず、このままでは帰還できそうになかった
バリラーリ、ウォルター、ミゲルの3機のモビルスーツ小隊は三方に分散しながらゆっくり密林の中を静かに進んでいく
シンガリを務めるウォルターは若手のエースパイロットで、他の中隊のなかでは目立つ活躍をしており将来有望な士官となるはずだった
それがなぜこのような辺境の小隊に格下げされて組み込まれたのか
彼は以前の部隊で敵前逃亡の疑惑をかけられていた
接近戦を得意とする上陸部隊の後方の高台から敵を狙撃し撃退していくのが彼の任務なのだ
そのときまさか高台まで敵のモビルスーツが接近してきたとは気付かず、彼はパニックを起こし持ち場を離れ逃走した
後方からの援護射撃を失った友軍はあっという間に殲滅させられてしまう
唯一生き残ったウォルター
彼の耳には同期のパイロット、サムの絶叫が今でも頭にこびりついていた…
サム…、サム…!
オレを許してくれ……!
ウォルターは何度も夢にうなされるようになった
