
サム・チェイシング・アフター 18頁完結
第1章 シグナル
コックピットのモニターには僚機の位置とともに後方から追ってくる謎のシグナルが灯っている
右には隊長機、左は新兵のミケル
そしてずうっとあとを付いてくるものの、まったく姿を見せてこない謎のシグナル
ウォルターにはこのシグナルがだんだんとかつての仲間サムなのではないか?と自問していた
アイツが追ってくる……!
恨みをもってオレを地獄に誘っている
サム、すまない
お前は部隊でも一番の親友だった
毎晩飲み明かし、女たちも俺たちに夢中だった
俺たちは部隊の英雄だった
先陣を切って戦場に切り込むサムの突撃部隊
それに息を合わせるように正面の敵を次々に撃墜していくウォルターのスナイパーカスタム
長年の阿吽の呼吸
それが突然目の前に現れた敵の姿にウォルターは初めて恐怖を感じてしまったのだ
彼は立ち向かうどころか、持ち場を離れ逃走してしまう
そのあいだもコックピットには僚機からの無線が入ってくる
仲間たちの断末魔
絶叫と怒号
そしてサムがウォルターの名前を何度も口にする
助けてくれウォルター!
早く目の前の敵を狙撃してくれ!
このままではみんなやられちまう?
オレには帰らなきゃいけない場所があるんだ
お前も知ってるだろう?
娘は来月学校で劇に出るんだ
主役だぜ?
何をやらせても泣いてばかりだったあの娘が!
だからオレは行ってやらなければいけないんだ
事前の連絡もせずに突然学校の講堂に登場してやるのさ?
きっとアイツは泣きながらオレに飛びついてくるに違いない
そうだろ?
お前にも会わせてやるよ?
パパたちは最強のタッグなんだって言ってやろうぜ?
そうさ、オレたちは最強さ!
ウォルター!
だから、早く
早く…
早く…
「やめてくれ、サムッ!?
もうオレを解放してくれッ!
1年前、もうお前は死んじまったんだ!
もうお前はここには居ないはずなんだよ!」
ウォルターは絶叫した
「こちらバリラーリ、どうしたウォルター?
何があった?何を見たんだッ!?
シグナルは敵だったのかッ?」
隊長機の声には反応せず、狂乱したウォルターは四方にビームライフルを撃ちまくっていた
「むやみに撃つな!敵に見つかるぞ!?」
その声は彼には届かなかった
ウォルターは撃破されてしまった
