リーニエント
第1章 ベロニカ
彼女の白い手首にうっすらと赤く浮かぶ痣を舌先で辿る。
「ふふ…くすぐったいよ。ちょっとね、抑えつけられちゃっただけだよ」
「僕がどれだけ心配したか、解る?生きた心地しないって、こう言うことなんだね……」
そう、彼女の耳元で告げた。
「せんせ……ズルい」
熱い吐息に上擦る璃子の声。満足そうに艶やかな笑みを向けた郁は自分の名を紡ぐその赤い唇へ、自身の唇を重ねた。
「…は」
「…ん、んっ…やぁー」
「んっ!」
離れた唇が不満だと言うように、ネクタイを掴み引き寄せられる郁。
「んっ…ん」
「ぁ…ん、郁さ、んぅっ」
リードのようにネクタイを引っ張る璃子に、口内を激しく攻め立てられる。
本当にこの娘は…。
郁は絡み合う唾液が口端から溢れ、顎に伝う感覚に身震いした。
「あーあ、はしたないな私の許婚さんは」
「ん…ごめん」
「ふふっ可愛い」
郁の顎を舐めながら、キュッと彼のネクタイを絞める。
「くっ…は」
「やだ、興奮してるの?」
「!」
下半身が熱く感じてはいたが、スラックスの上から目視出来る程の膨らみに郁自身が驚いていた。
「いや、これはっ」
「いーよ、郁さん。…しよ?」
「璃子ちゃんっまた!」
駄目だ―
その一言を出す前に華奢な筈の彼女にベッドへ引き込まれてしまった。
覆い被さる可愛い彼女。再びその可憐な唇が重なり、口内を蹂躙された。
「ん…は、だめ!駄目だ…って」
力は大人の男である郁が優位なのは当たり前だが、それでも璃子を振り払えない。
惚れた弱みとも言うけれど……。
「郁さんはね、虐められるのが好きなんだよ」
いつか彼女に言われた言葉を思い出しながら、細い腰に腕を滑らせた。
end
20251202
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