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リーニエント

第2章 チューベローズ


「香(かおり)ちゃん、だよね」

そう、声を掛けられたのは偶然。ドラッグストアでの出来事だった。

香は熱い息を吐き、ごろりと寝返りをうつ。

「啓輔(けいすけ)さん、あんな事する人だったなんて……」

柔らかそうな髪質と、色素の薄い瞳に白い肌。
話し方も見た目通り優しい。

数年振りに再会した"はとこ"のお兄さん。

会ったことが有るのは一度きりだった。
親戚の何かで顔を合わせた事があるというだけ。

香の父親の"いとこ"に当たる人が啓輔の母親だ。
親同士すら交流などほぼ無い、遠い親戚。

更にたまたま居合わせた、彼の連れである隼人(はやと)。
黒い前髪から覗く、きつい目つきと乱暴な言葉使いの人。
なのに香が感じていたのは恐怖心よりも、啓輔とは違った優しさだった。

「わたし、なんであんな事……」

と、香は顔をうずめ、ベッドの上で足を上下にバタつかせた。

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