創造の双子。
第3章 電車でー…
…そう。 慧だった。
「おねーちゃーん!? おねーちゃーん!?」
雑音に消されないように、甲高くて力強い声だった。
「おねーちゃーん!? おね…」
目線の先は、西華だった。
「ちょっと! なにしてんですか!?そこのお前だよっ…!!」
周りの乗客たちがシン…と静まり返る。
西華も、聞いたことのない弟の声にビクッとなった。
「…ちっ!」
西華を押さえていた男が一目散に逃げ出す。
それを追う乗客たちも一目散に飛び出す。
しばらく西華は魂の抜けたように立っていた。
「…姉ちゃん…もう大丈夫だよ…!!」
慧はゆっくり近づいて、西華をまるで宝石を包み込むように 抱きしめる。
すると、西華は泣き出した。
全体重を慧に預ける。
「あっ…あっあっ…あっ…慧…慧ぃ…っ…!」
西華は不安定から解き放たれた安心もあったが、私の知ってる弟じゃない…と心の奥で思っていた。