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SAKURA (さくら)

第2章 ソメイヨシノ 1  弥生

 4

 この係長の…
 わたしを見る、いやらしい目には…
 いつも、辟易していた―――

 特に、スカートから伸びる脚を見つめてくる目には…
 吐き気さえ感じていた。

 でも…

「いつも係長には、甘えてばっかりでぇ…」

 今日のわたしは、傍らね、慶太くんとの関係を経たせいなのか…

 今まて、吐き気さえ感じていたいやらしい視線が…

 なぜか…

 熱く…感じられる―――

「いやぁ、そんな弥生課長のお願いには、無下にはできないですからぁ…」

 でも、今日のわたしには…

 そんな、歯が浮くような、白々しい言葉にさえ感じ入り…

「…………」

 その、ジッと、逸れずに見つめてくる、いやらしい目に…

「でも、ホント、いつもありがたくてぇ…」

 わざと、その目を意識して…

 何度となく、脚を組み直していた。

「いやぁ、そんなぁ……」

 そう、今日は、傍らに慶太くんが居るから…

 あの視線が…

 今日は、逃げたくならない。

「あ、や……」

「え……」

「やだわ、伝線しちゃったわ…」

 こっそりと、わざと、爪先を引っ掛けた……

「…………」

 ジッと、見つめてくる、その係長の目が……

「もぉ、やだわぁ……」

 奥が、じわりと、熱くなる…

「………っ」

 そして、傍らの慶太くんの目にも…

「じゃ、係長さん、お願いできますか」

「あ、はい、もちろんです」

「ありがとうございます…」

 わたしは、そう、頭を下げ…

 また、スッと、脚を組み直す。

 そして、二人の、逸れずに、熱い視線を感じ入り…

「じゃぁ、ありがとうございます…」

 契約を交わし…
 帰途のタクシーに乗る。

「ふうぅ…」

「ほ、ホントなんすね…」

「え…」

「俺一人の時とは、全然違うんすからぁ」

「そうなのぉ…」

「は、はい、そうなんすよ…」

「ふぅん…」

 わたしは、そう頷き…

 脚を…

 わざと、ほころばせたストッキング脚を…

 慶太くん側に、組み、伸ばしていく。

「ね、ねぇ…」

「き、今日も…破け……
 や、破い…ちゃった………」
 指が、触れてきた。

「………」

 指先が、熱い―――

「あ…会社にはさぁ…」

「は…」

「直帰…て、云ってあるから…」

 指先に、力がこもる…

 もう、戻れない強さで―――


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