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SAKURA (さくら)

第5章 八重桜 1 弥生

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  もう、わたしは…

 戻れないかもしれない――

「去年の子って……女の子…だから…ね………」

「えっ、あっ」

 慶太くんの顔が、パアッと晴れていく…

「もう……バカなんだからぁ………」

「そ、そうっすかぁ…」

「うん………」

 わたしは、慶太くんの手をギュッと掴み、逸らさずに見つめる――

 そして、あの昔と、重なる昂ぶりに、想いを返していく…

 だが、それは…

 あのひととの、戻る想い、ではなくて…

 あの時の、昂ぶりの重なりの比較。

 つまり、それは、既視感…

 あの人を愛するきっかけの、重なり――

「な、なんだぁ、オレは、てっきり…」

 慶太も、逸れずに、見返して…

 重なる手が、熱くなってきた。

「もお……バカ…ね……」

「え…」

 わたしの手も、熱を帯びてくる。

「け、慶太…だ、だけ…だから………」

「………」

 慶太くんの手が、離れ…

 指先が、膝を撫で…

 スカートの裾まで、這い上ってくる。
 
「………」

 指先が熱い…

 そして、わたしは、小さく脚を振るわせ…
 
 その指先を、上から押さえる――

「………」

 お互いに、逸れず…

「………」

 まだ、ダメ――

「あ…ま、ま……」

 もう、破かない……

「弥生課長…なんか、違うっすね…」

「…え……」

 触れてる脚が、汗で滲む…

「……き、今日も……」

「………」

「……直帰、で……いいっすよね……」

「………」
 一瞬の間。

 そして

「………」

 わたしは、頷く――

「………」

 わかってしまった…

 もう、戻れないところまで、きてしまったということだけは――

「………」
 それでも、手は、離さない。

 もう…

 離せない…

 離したくない、から――


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