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SAKURA (さくら)

第6章 八重桜 2 美卯

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「……では、これで仮契約という事で………」

「はい、ぜひともこれからもよろしくお願いします」

「いや、わざわざ本部長さんにご足労頂きまして、却って恐縮です」

「いやぁ、これは、彼女の初めての企画でもあるんで、なんとかしたくて……―――」

 ――と、本部長の同行のお陰で、驚くほどにスムースに、仮契約まで進んだ。

「あ、これからもよろしくお願いします」

 わたしは、平身低頭に頭を下げ、お礼を述べる…

 さすが、本部長パワーである――

「どうですか、この後、ぜひとも…」

「はい、喜んでご一緒させていただきます」

 そして、夜の会食となった――

「あ、美卯くん、秘書にホテル頼んでおいてくれるかな…」

「え…あ…」

「もちろん、二部屋な…」

「あ、は、はい…」

 だが…

『今日は、直帰って…』

 あれから、そのつもりではあったのだが…

 決められた――

 それに…

 本部長という舟に乗ってしまったのだから…

 もう、降りられない。

 いや…

 そう、決めたのだ――


「さぁ、行くか」

「はい……」

 まずは、最初の大波を乗り越えた――

 そのくらい、この企画の締結は、大きな契約であり…

 わたしだけではなく…

 本部長にとっても、就任早々の大きな第一歩となるはずなのである。

 そしてそれは…

 わたしと、本部長の関係の…

 第一歩でもあった――



「………美卯くんは、何号室なんだ?」

 取り引き先との懇談の会食を終え、わたしたちは、チェックインを済ませた。

「あ、はい、1025室…あ、二つお隣です」

「そうか…」

「………」

 本部長は、カードキーを見つめ…

「バーに………」

 逸らずに見つめ、手を握ってきた。

「……は、はい………」

「………」
 
「あ……でも、その前に………」

「………」

「…で、できれば………」

「………」

 まだ、わたしには…

 お酒の力も必要だったし…

「先に…し、シャワーを……」

「あ、うん……そうか、そうだな……」

 間が、開くのも、イヤだったから…

 できれば…

 バーから、部屋へと…

 流されたいから―――

 

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