SAKURA (さくら)
第6章 八重桜 2 美卯
3
「あ…お待たせしてすいません…」
「うん、いや、そんなに待ってないよ」
バーに誘われた時、わたしがシャワーを所望した…
「ごめんなさい…」
そしてシャワーを済ませ、一通りの身支度を整え、急いだつもりではあったのだが…
「いや、大丈夫だから…」
本部長は、優しい目を向け…
「さ、ここへ…」
カウンターの、左隣に導く。
「はい…」
急いだのだが、一時間近く待たせたはず…
「さ、何を?」
「あ、はい…」
彼の前の、ロックグラスの氷は、半分近く溶けていた――
「マティーニを…」
「ほう…」
「え…」
「いや、大丈夫なのかなってね…」
マティーニは強いカクテル――
「あ…は、はい…」
わたしは頷きながら、彼を見る…
そして…
「あ、貴方が……いるから………」
わたしは、そう、呟いた。
「…あ……」
すると、彼の手が…
カウンターの下で、そっと、触れてきた。
「そうか……」
「………」
そう、わたしは…
シャワーを浴びながら…
覚悟は決めた――
一歩を、いや…
彼と共に、走る、と、決めたのだ。
「うん…そうか……」
「………」
だけど…
「せっかくシャワーしたんだから…
化粧なんて、良かったのに……」
逸らずに見つめ、そう囁いてきた。
まだ、素顔は、見せられなかった――
「え…あ、い、いや……」
触れられている手が、熱い…
「夜は…」
「………」
「ありのままの、美卯くんが…」
「………」
「見せて、ほしいな……」
「あ…は、はい…」
でも、まだ…
握られている、彼の左手に…
指輪の感触を感じていた――
「でも…」
「え…」
「その、艶々な唇も、堪らないかな…」
「あ……」
艶々な唇…
それは、ルージュにグロスの重ね塗り…
まだ、本当のわたしではない…
偽りの艶やかさ――
「………」
彼の手…
目…
吐息が、熱い――
「わ、わたしも…」
早く…
貴方を見極めたい――
それは…
ただのシャネルの、代わりなのか…
ムスクの、代わりになれるのか…
それとも…
わたしの『サクラ』に変わるのか…
「……知りたい………」
わたしは、熱く、見つめ返す――
「あ…お待たせしてすいません…」
「うん、いや、そんなに待ってないよ」
バーに誘われた時、わたしがシャワーを所望した…
「ごめんなさい…」
そしてシャワーを済ませ、一通りの身支度を整え、急いだつもりではあったのだが…
「いや、大丈夫だから…」
本部長は、優しい目を向け…
「さ、ここへ…」
カウンターの、左隣に導く。
「はい…」
急いだのだが、一時間近く待たせたはず…
「さ、何を?」
「あ、はい…」
彼の前の、ロックグラスの氷は、半分近く溶けていた――
「マティーニを…」
「ほう…」
「え…」
「いや、大丈夫なのかなってね…」
マティーニは強いカクテル――
「あ…は、はい…」
わたしは頷きながら、彼を見る…
そして…
「あ、貴方が……いるから………」
わたしは、そう、呟いた。
「…あ……」
すると、彼の手が…
カウンターの下で、そっと、触れてきた。
「そうか……」
「………」
そう、わたしは…
シャワーを浴びながら…
覚悟は決めた――
一歩を、いや…
彼と共に、走る、と、決めたのだ。
「うん…そうか……」
「………」
だけど…
「せっかくシャワーしたんだから…
化粧なんて、良かったのに……」
逸らずに見つめ、そう囁いてきた。
まだ、素顔は、見せられなかった――
「え…あ、い、いや……」
触れられている手が、熱い…
「夜は…」
「………」
「ありのままの、美卯くんが…」
「………」
「見せて、ほしいな……」
「あ…は、はい…」
でも、まだ…
握られている、彼の左手に…
指輪の感触を感じていた――
「でも…」
「え…」
「その、艶々な唇も、堪らないかな…」
「あ……」
艶々な唇…
それは、ルージュにグロスの重ね塗り…
まだ、本当のわたしではない…
偽りの艶やかさ――
「………」
彼の手…
目…
吐息が、熱い――
「わ、わたしも…」
早く…
貴方を見極めたい――
それは…
ただのシャネルの、代わりなのか…
ムスクの、代わりになれるのか…
それとも…
わたしの『サクラ』に変わるのか…
「……知りたい………」
わたしは、熱く、見つめ返す――
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