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SAKURA (さくら)

第6章 八重桜 2 美卯

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「あ…お待たせしてすいません…」

「うん、いや、そんなに待ってないよ」

 バーに誘われた時、わたしがシャワーを所望した…
 
「ごめんなさい…」

 そしてシャワーを済ませ、一通りの身支度を整え、急いだつもりではあったのだが…

「いや、大丈夫だから…」

 本部長は、優しい目を向け…

「さ、ここへ…」

 カウンターの、左隣に導く。

「はい…」

 急いだのだが、一時間近く待たせたはず…

「さ、何を?」

「あ、はい…」

 彼の前の、ロックグラスの氷は、半分近く溶けていた――

「マティーニを…」

「ほう…」

「え…」

「いや、大丈夫なのかなってね…」

 マティーニは強いカクテル――

「あ…は、はい…」

 わたしは頷きながら、彼を見る…

 そして…

「あ、貴方が……いるから………」

 わたしは、そう、呟いた。

「…あ……」

 すると、彼の手が…

 カウンターの下で、そっと、触れてきた。

「そうか……」

「………」

 そう、わたしは…

 シャワーを浴びながら…

 覚悟は決めた――

 一歩を、いや…

 彼と共に、走る、と、決めたのだ。

「うん…そうか……」

「………」

 だけど…

「せっかくシャワーしたんだから…
 化粧なんて、良かったのに……」

 逸らずに見つめ、そう囁いてきた。

 まだ、素顔は、見せられなかった――

「え…あ、い、いや……」

 触れられている手が、熱い…

「夜は…」

「………」

「ありのままの、美卯くんが…」

「………」

「見せて、ほしいな……」

「あ…は、はい…」

 でも、まだ…

 握られている、彼の左手に…

 指輪の感触を感じていた――

「でも…」

「え…」

「その、艶々な唇も、堪らないかな…」

「あ……」

 艶々な唇…

 それは、ルージュにグロスの重ね塗り…

 まだ、本当のわたしではない…

 偽りの艶やかさ――

「………」

 彼の手…

 目…

 吐息が、熱い――

「わ、わたしも…」

 早く…

 貴方を見極めたい――

 それは…

 ただのシャネルの、代わりなのか…

 ムスクの、代わりになれるのか…

 それとも…

 わたしの『サクラ』に変わるのか…

「……知りたい………」

 わたしは、熱く、見つめ返す――

 

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