中毒の処方箋 〜淫らな輪舞曲〜
第10章 飽食の時。瑠花(3)
賑やかなパーティ会場の喧騒は、まるで遠い異国の祭りのように、私の意識の表層をただ滑り落ちていく。今日は会社の50周年の記念パーティ。
上司の代わり映えのしない、形式ばかりの挨拶が終わり、乾杯の唱和とともに食器が触れ合う高い音が部屋に響き渡った。
職場の忘年会という、これ以上ないほどに退屈で、かつ公的な場。誰もが1年の労をねぎらい、無難な笑顔を張り付けているこの空間で、しかし私たちの間には、誰にも言えない秘密の糸が張り巡らされていた。
「先生、お疲れ様です。今年もお世話になりました」
普段通り、屈託のない、まばゆい笑顔を浮かべながら瑠花が私のグラスにビールを注いだ。彼女の指先が、ほんの一瞬だけ、私の手元に触れた。
熱いような、しかしひんやりとした、不思議な温度。職場の誰もが、それをただの給仕の際の偶然だと思っている。だが、彼女の潤んだ瞳の奥にある静かな熱を、私は知っていた。その熱は、私たちが共有してきた幾つもの夜の記憶そのものだった。
テーブルの対面では、瑞希がいつもと変わらないてきぱきとした仕草でジョッキを傾けている。
「先生、瑠花ばかりに注がせてないで、私とも乾杯してくださいよ。来年はもっとこき使ってやるんですから」
男勝りの性格な瑞希の冗談めかした言葉に私の頬は思わず緩んだ。しかし、軽口を叩く瑞希の視線が、一瞬だけ鋭く私を射抜く。それは単なる部下としての親しみを超えた、何かを値踏みするような、そして挑発するような色を帯びていた。
上司の代わり映えのしない、形式ばかりの挨拶が終わり、乾杯の唱和とともに食器が触れ合う高い音が部屋に響き渡った。
職場の忘年会という、これ以上ないほどに退屈で、かつ公的な場。誰もが1年の労をねぎらい、無難な笑顔を張り付けているこの空間で、しかし私たちの間には、誰にも言えない秘密の糸が張り巡らされていた。
「先生、お疲れ様です。今年もお世話になりました」
普段通り、屈託のない、まばゆい笑顔を浮かべながら瑠花が私のグラスにビールを注いだ。彼女の指先が、ほんの一瞬だけ、私の手元に触れた。
熱いような、しかしひんやりとした、不思議な温度。職場の誰もが、それをただの給仕の際の偶然だと思っている。だが、彼女の潤んだ瞳の奥にある静かな熱を、私は知っていた。その熱は、私たちが共有してきた幾つもの夜の記憶そのものだった。
テーブルの対面では、瑞希がいつもと変わらないてきぱきとした仕草でジョッキを傾けている。
「先生、瑠花ばかりに注がせてないで、私とも乾杯してくださいよ。来年はもっとこき使ってやるんですから」
男勝りの性格な瑞希の冗談めかした言葉に私の頬は思わず緩んだ。しかし、軽口を叩く瑞希の視線が、一瞬だけ鋭く私を射抜く。それは単なる部下としての親しみを超えた、何かを値踏みするような、そして挑発するような色を帯びていた。
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