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君の体温は義務だった

第2章 通知

◇◇◇

8月11日。

目が覚めたのは、昼に差し掛かる頃だった。

カーテンの隙間から差し込む光がやけに明るい。

スマホを手に取る。
画面には「11:47」と表示されていた。

「……寝すぎた。」

別に急ぎの予定があるわけではない。
今日は祝日だ。
慌てて起き上がる理由もないのだが、さすがに腹が減っている。

身体を起こす。
なんとなく手首のHUG Bandに視線を落とした。

睡眠時間――4時間38分。

「……あれ。」

思ったよりも寝ていなかった。

そうだ、昨夜は途中で目が覚めたのだった。
午前3時過ぎ。
嫌な夢を見た気がする。

その内容は、もうほとんど覚えていない。
ただ。
胸の奥だけが、妙にザワザワと騒ぎ立てていた。

こういうことは、昔からたまにある。
幼い頃から、ずっと。

目が覚めて、何かを確かめるように暗い部屋の中をじっと見回す。
もちろん、何も異変はない。
当たり前だ。

それでも、一度ざわつき始めた心は簡単には鎮まらず、しばらく眠れなくなる。

昨夜もそうだった。
結局、暗闇の中でスマホを手に取り、どうでもいいニュースをダラダラと眺めた。
動画を一本観て。
また別の動画を開いて。
気付けば、カーテンの向こうの空が少しずつ白み始めていた。

「……寝るの下手くそかよ。」

自分に向かって呟き、小さく苦笑する。

HUG Bandの画面には「睡眠不足」の表示。
ついでに睡眠の質も、安定の低評価だ。

「知ってるっての。」

画面をタップして表示を消す。
頭の奥に薄い霧が立ち込めているような、重い感覚が残っていた。
ベッドの中に長くいたはずなのに、身体はだるい。

それでも、今日は休みだ。
もう少しくらいグダグダしていても、誰にも怒られはしない。

キッチンへ向かい、冷蔵庫の扉を開ける。

水。
卵。
調味料。
あとは、いつ買ったかも思い出せないドレッシング。

食欲がないというか、正確には「今すぐ食べたいもの」が存在しなかった。

「……あとでいいか。」

静かに扉を閉めた。

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