
姉のような母のような黄色い花
第1章 夕陽の差す方角
「そうなんじゃないの?」
「だとしたら違うと思う。俺の母親は美織と正反対だよ。昔から女優を目指していて、人前に立つのが好きで、いまも友達と舞台とかやっているんだ。俺はそういう目立ちたがり屋で、声のでかい女の人がすごく嫌いなんだよね。なんか厚かましくて」
事実、「女優を目指しています!」とか「人々に笑顔を届けたい」などと真顔で言う女性に出会うと、それだけで嫌悪感を抱いてしまう。美織は仕事の時は社交的だけど、本当は家で一人、本を読んだり映画を見たりしているのが好きなタイプだ。
「へー、意外。圭ちゃんとも正反対だね」
「うん。だからマザコンじゃないと思う……ただ……」
言いかけてやっぱり止めた。美織のようなお母さんがよかった、とつい本音を漏らしそうになったからだ。
そう、姉のような母のような女性を欲していたんだ、この頃は。
結局、美織と立て続けにセックスをして、さすがに二人とも疲れて眠ってしまっていた。
目を覚ましたのは、携帯電話の着信音が鳴ったからだ。外はもう暗い。部屋も暗かった。
「圭ちゃん、電話! 仕事の電話じゃない?」
美織に起こされて、携帯電話の液晶画面を見ると、少し前に挨拶をしにいった出版社の編集者からだった。僕はベッドから跳ね起きて、元気よく電話に出る。仕事の依頼かもしれない。
「はい!」
「あ~、見城君。Tですけど、企画送ってくれて、ありがとね~。でさ~、君の企画ではないんだけど、ちょっと頼みたい仕事があるんだけど、やる?」
横柄な言い方に一瞬ムッとしたが、ここは我慢だ。駆け出しのフリーライターである僕は、仕事をお願いされるだけでもありがたい。いつも携帯電話を手元に置いているのは、急な原稿依頼にすぐ対応するためだ。ライターなど吐いて捨てるほどいるのだ。電話に出られなければ、別のライターに仕事は回ってしまう。
「はい! なんでもやります!」
このころは仕事の内容も聞かず、とにかく引き受けていた。
「そう。よかった。実はかなり急いでいてさ。明日、いける? 現地で待ち合わせして、そのまま取材したいんだよね」
「大丈夫っす! どこに行けばいいですか?」
「あ~、じゃあ、池袋にしよう。南口のルミネの前で」
「了解です! あの……ちなみに、どんな仕事ですか?」
一応、聞いておこうと思った。
「風俗。潜入だよ。得意でしょ?」
「だとしたら違うと思う。俺の母親は美織と正反対だよ。昔から女優を目指していて、人前に立つのが好きで、いまも友達と舞台とかやっているんだ。俺はそういう目立ちたがり屋で、声のでかい女の人がすごく嫌いなんだよね。なんか厚かましくて」
事実、「女優を目指しています!」とか「人々に笑顔を届けたい」などと真顔で言う女性に出会うと、それだけで嫌悪感を抱いてしまう。美織は仕事の時は社交的だけど、本当は家で一人、本を読んだり映画を見たりしているのが好きなタイプだ。
「へー、意外。圭ちゃんとも正反対だね」
「うん。だからマザコンじゃないと思う……ただ……」
言いかけてやっぱり止めた。美織のようなお母さんがよかった、とつい本音を漏らしそうになったからだ。
そう、姉のような母のような女性を欲していたんだ、この頃は。
結局、美織と立て続けにセックスをして、さすがに二人とも疲れて眠ってしまっていた。
目を覚ましたのは、携帯電話の着信音が鳴ったからだ。外はもう暗い。部屋も暗かった。
「圭ちゃん、電話! 仕事の電話じゃない?」
美織に起こされて、携帯電話の液晶画面を見ると、少し前に挨拶をしにいった出版社の編集者からだった。僕はベッドから跳ね起きて、元気よく電話に出る。仕事の依頼かもしれない。
「はい!」
「あ~、見城君。Tですけど、企画送ってくれて、ありがとね~。でさ~、君の企画ではないんだけど、ちょっと頼みたい仕事があるんだけど、やる?」
横柄な言い方に一瞬ムッとしたが、ここは我慢だ。駆け出しのフリーライターである僕は、仕事をお願いされるだけでもありがたい。いつも携帯電話を手元に置いているのは、急な原稿依頼にすぐ対応するためだ。ライターなど吐いて捨てるほどいるのだ。電話に出られなければ、別のライターに仕事は回ってしまう。
「はい! なんでもやります!」
このころは仕事の内容も聞かず、とにかく引き受けていた。
「そう。よかった。実はかなり急いでいてさ。明日、いける? 現地で待ち合わせして、そのまま取材したいんだよね」
「大丈夫っす! どこに行けばいいですか?」
「あ~、じゃあ、池袋にしよう。南口のルミネの前で」
「了解です! あの……ちなみに、どんな仕事ですか?」
一応、聞いておこうと思った。
「風俗。潜入だよ。得意でしょ?」

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