My Godness~俺の女神~
第6章 ♯Conflict(葛藤)♯
あんたみたいな暇あり金ありの有閑マダムがやってられないんなら、俺はもっと、やってられないよ。何が哀しくて、休日の昼間から、こんなオバさん相手に機嫌取りしなきゃならねえんだ?
悠理はまた心で悪態をつき、さりげなく腕時計を見た。金色のロレックスは、実沙からのプレゼントである。こういう、いかにも成金めいた物は好きではないから、普段は絶対に身につけないが、流石に実沙が店に来るときには忘れずに愛用しているふりをする。
「実沙さん、そろそろ電車の時間スけど」
いかにも残念そうに言うのも忘れない。
実沙が煙草を口から放すと、悠理はまたクリスタルテーブルの上の灰皿を実沙の前に差し出した。
実沙は悠理が恭しく捧げ持った灰皿に煙草の先を押しつけ、棄てた。
「ああ、本当に名残は尽きないわ。こうしてずっと明日の朝まで悠理クンと一緒にいたい気分」
冗談じゃねえや。
悠理は肩を竦めたい衝動を抑え、また〝キラー・スマイル〟を浮かべた。氷のように冷たいのに、女心を熱く蕩けさせるといわれている伝説の微笑である。
「俺も、またひと月も実沙さんに逢えないと思うと、何か胸にこう、ぽっかり穴が空いたようですよ」
別れ際のこのひと言が実はどれだけ女の心をぐっと惹きつけるかは長年の経験から嫌になるくらい知り尽くしている。
胸に片手を添えて哀しげに言うと、実沙は悠理の顎に手をかけて仰のかせた。
彼は二人並んでソファに座っているこの場所から、一瞬、逃げ出そうかと思った。しかし、逃げ出したいのを堪え、婉然と女に微笑みかける。
実沙はそのまま悠理の顔を引き寄せ、唇を塞いだ。悠理もまた女の身体に手を回し、熱烈なキスに応える。
少しく後、悠理はさりげなく女の身体を押しやった。
「そろそろ行かないと。電車に乗り遅れてしまう」
「ねえ、今度はアフタ、行けるでしょ」
この女と関係を持ったのは、いつだったか。そう、四月の終わりだった。あの女―入倉実里をさんざん弄んでやってから数日ほど後のことだ。
悠理はまた心で悪態をつき、さりげなく腕時計を見た。金色のロレックスは、実沙からのプレゼントである。こういう、いかにも成金めいた物は好きではないから、普段は絶対に身につけないが、流石に実沙が店に来るときには忘れずに愛用しているふりをする。
「実沙さん、そろそろ電車の時間スけど」
いかにも残念そうに言うのも忘れない。
実沙が煙草を口から放すと、悠理はまたクリスタルテーブルの上の灰皿を実沙の前に差し出した。
実沙は悠理が恭しく捧げ持った灰皿に煙草の先を押しつけ、棄てた。
「ああ、本当に名残は尽きないわ。こうしてずっと明日の朝まで悠理クンと一緒にいたい気分」
冗談じゃねえや。
悠理は肩を竦めたい衝動を抑え、また〝キラー・スマイル〟を浮かべた。氷のように冷たいのに、女心を熱く蕩けさせるといわれている伝説の微笑である。
「俺も、またひと月も実沙さんに逢えないと思うと、何か胸にこう、ぽっかり穴が空いたようですよ」
別れ際のこのひと言が実はどれだけ女の心をぐっと惹きつけるかは長年の経験から嫌になるくらい知り尽くしている。
胸に片手を添えて哀しげに言うと、実沙は悠理の顎に手をかけて仰のかせた。
彼は二人並んでソファに座っているこの場所から、一瞬、逃げ出そうかと思った。しかし、逃げ出したいのを堪え、婉然と女に微笑みかける。
実沙はそのまま悠理の顔を引き寄せ、唇を塞いだ。悠理もまた女の身体に手を回し、熱烈なキスに応える。
少しく後、悠理はさりげなく女の身体を押しやった。
「そろそろ行かないと。電車に乗り遅れてしまう」
「ねえ、今度はアフタ、行けるでしょ」
この女と関係を持ったのは、いつだったか。そう、四月の終わりだった。あの女―入倉実里をさんざん弄んでやってから数日ほど後のことだ。