My Godness~俺の女神~
第1章 Prologue~序章~
子どもが生まれたら、俺もそろそろホスト家業から抜けようかなと考えている。親なら、ちゃんと子どもに胸張れるような生き方しなきゃ。それは親父が俺に身をもって教えてくれたことだ。たとえ、どれだけ貧乏でも、親父はちゃんと前向きに生きてた。
子どもが物心ついたときに、父ちゃんの仕事はって訊かれて、ちょっとあまり言いたくはない。別にこの仕事がどうのとかいうわけじゃない。でも、俺は子どもには、もっと別の仕事をしていると胸を張って言いたいんだ。
俺の心が今も晴れないのは、早妃がずっと家で寝たきりになっているからだ。どうも早産気味らしくて、起きてトイレに行っただけで、赤ん坊が下がってくるのが判るんだとか本人は言っている。
男の俺にはよく理解できないが、クリニックの先生の話では、本当は入院した方が良いのに、早妃が家にいたいと言うんで入院は控えて自宅安静にしているのだ。まあ、確かに、三ヶ月で妊娠が判った直後も迫流産だと言われ、二週間ほど入院したこともあった。
切迫流産という聞き慣れない響きのある言葉が俺には世にも怖ろしげな禍々しいものにに思えた。その早妃のことを思えば、このおばさんのくれた数万円は貴重な収入源だ。
あまつさえ、これから赤児が生まれて店を辞めたときのことを思えば、金は少しでも多く貯めておいた方が良い。実入りの点でいえば、この仕事に勝るものなんて、そうそうはないのは判りきっている。
「お母さまの具合が良くなったら、また、考えておいてね。アフターのこと」
生暖かい声がふうっと吹きかけられ、俺は思わず身震いした。
「そういえば、今日は夕方から雨だって、予報では言ってたわね。悠理クン、私、傘持ってきてないのよ。コンビニのでも何でも良いから、傘買ってきてくれない?」
女が事もなげに言い、また長財布から一枚抜いてよこした。今度は流石に千円札だ。
「はい。店の隣に小さなコンビニありますから、そこで買ってきますよ」
こんな場合、タクシーを呼ぶだなんて、野暮なことは絶対に口にしないのが鉄則だ。
旦那にも子どもにも内緒のホストクラブ通いでタクシーなんかうっかり使おうものなら、どこから情報が洩れるか知れたものではない。
子どもが物心ついたときに、父ちゃんの仕事はって訊かれて、ちょっとあまり言いたくはない。別にこの仕事がどうのとかいうわけじゃない。でも、俺は子どもには、もっと別の仕事をしていると胸を張って言いたいんだ。
俺の心が今も晴れないのは、早妃がずっと家で寝たきりになっているからだ。どうも早産気味らしくて、起きてトイレに行っただけで、赤ん坊が下がってくるのが判るんだとか本人は言っている。
男の俺にはよく理解できないが、クリニックの先生の話では、本当は入院した方が良いのに、早妃が家にいたいと言うんで入院は控えて自宅安静にしているのだ。まあ、確かに、三ヶ月で妊娠が判った直後も迫流産だと言われ、二週間ほど入院したこともあった。
切迫流産という聞き慣れない響きのある言葉が俺には世にも怖ろしげな禍々しいものにに思えた。その早妃のことを思えば、このおばさんのくれた数万円は貴重な収入源だ。
あまつさえ、これから赤児が生まれて店を辞めたときのことを思えば、金は少しでも多く貯めておいた方が良い。実入りの点でいえば、この仕事に勝るものなんて、そうそうはないのは判りきっている。
「お母さまの具合が良くなったら、また、考えておいてね。アフターのこと」
生暖かい声がふうっと吹きかけられ、俺は思わず身震いした。
「そういえば、今日は夕方から雨だって、予報では言ってたわね。悠理クン、私、傘持ってきてないのよ。コンビニのでも何でも良いから、傘買ってきてくれない?」
女が事もなげに言い、また長財布から一枚抜いてよこした。今度は流石に千円札だ。
「はい。店の隣に小さなコンビニありますから、そこで買ってきますよ」
こんな場合、タクシーを呼ぶだなんて、野暮なことは絶対に口にしないのが鉄則だ。
旦那にも子どもにも内緒のホストクラブ通いでタクシーなんかうっかり使おうものなら、どこから情報が洩れるか知れたものではない。