My Godness~俺の女神~
第6章 ♯Conflict(葛藤)♯
あのことだけでも、あいつが恥知らずな人間ではないことは判る。
いいや、俺は端から判っていたんだ。本当に悪いのはあの女じゃない。早妃の方が先に路上に飛び出し、あの女は咄嗟にブレーキをかけた。だけど、間に合わなかった。
あれは不幸な事故だ。あの女はたまたま、その現場に居合わせただけだ。
俺はそれを重々判っていたながら、敢えて判らないふりをした。そうしなければ、心が耐えられなかったから。俺の早妃と赤ん坊が突然、取り上げられてしまったという理不尽な宿命に心が折れそうだったから。
だから、俺はあの女をひたすら憎むことで、怒りの矛先をあいつに向けることで、辛うじて自分自身を保ったんだ。
恥知らずなのは、俺の方だ。俺は心が弱すぎて、誰かを憎むことでしか哀しみを乗り越えられなかった。
悠理が黙り込んだのを見て、柊路は悠理から離れた。
「信じられないというのなら、お前自身の眼で確かめてみると良い。彼女、妊娠したせいで会社にも居づらくなって、辞めさせられたんだ。多分、お前の顔を見るのも恐らく、これが最後になるだろう」
「柊路?」
「俺は店を辞める。これからは風俗から脚を洗って、堅気として生きてみる。まずはそこから始めなきゃ、実里ちゃんにふさわしい男にはならないからな。」
悠理がガバと顔を上げた。
「店を辞めて、それから、どうするんだ?」
「実里ちゃんに改めてプロポーズするつもりだ。生まれてくる子どものこともあるし、できるだけ早く結婚するつもりだよ。もっとも、運良くOKして貰えればの話だが」
柊路は最後に一瞬、精悍な顔をほころばせ、悠理がよく知る親友の顔を見せて去っていった。
実里は精一杯、背伸びしてみた。それでも、まだ最上段の棚には届かない。こんなときには、小柄な自分が恨めしくなる。
実里の勤務するスーパーでは、パートは三交代制だ。朝八時半から一時まで、更に午後一時から五時半まで、最後が五時半から閉店の十時までの勤務となる。
小さなスーパーだが、夜遅くまで開いていることから、勤め帰りの人が立ち寄ることが多く、それなりに繁盛していた。
いいや、俺は端から判っていたんだ。本当に悪いのはあの女じゃない。早妃の方が先に路上に飛び出し、あの女は咄嗟にブレーキをかけた。だけど、間に合わなかった。
あれは不幸な事故だ。あの女はたまたま、その現場に居合わせただけだ。
俺はそれを重々判っていたながら、敢えて判らないふりをした。そうしなければ、心が耐えられなかったから。俺の早妃と赤ん坊が突然、取り上げられてしまったという理不尽な宿命に心が折れそうだったから。
だから、俺はあの女をひたすら憎むことで、怒りの矛先をあいつに向けることで、辛うじて自分自身を保ったんだ。
恥知らずなのは、俺の方だ。俺は心が弱すぎて、誰かを憎むことでしか哀しみを乗り越えられなかった。
悠理が黙り込んだのを見て、柊路は悠理から離れた。
「信じられないというのなら、お前自身の眼で確かめてみると良い。彼女、妊娠したせいで会社にも居づらくなって、辞めさせられたんだ。多分、お前の顔を見るのも恐らく、これが最後になるだろう」
「柊路?」
「俺は店を辞める。これからは風俗から脚を洗って、堅気として生きてみる。まずはそこから始めなきゃ、実里ちゃんにふさわしい男にはならないからな。」
悠理がガバと顔を上げた。
「店を辞めて、それから、どうするんだ?」
「実里ちゃんに改めてプロポーズするつもりだ。生まれてくる子どものこともあるし、できるだけ早く結婚するつもりだよ。もっとも、運良くOKして貰えればの話だが」
柊路は最後に一瞬、精悍な顔をほころばせ、悠理がよく知る親友の顔を見せて去っていった。
実里は精一杯、背伸びしてみた。それでも、まだ最上段の棚には届かない。こんなときには、小柄な自分が恨めしくなる。
実里の勤務するスーパーでは、パートは三交代制だ。朝八時半から一時まで、更に午後一時から五時半まで、最後が五時半から閉店の十時までの勤務となる。
小さなスーパーだが、夜遅くまで開いていることから、勤め帰りの人が立ち寄ることが多く、それなりに繁盛していた。