My Godness~俺の女神~
第7章 ♯Pray(祈り)♯
時間はこれより少し前に遡る。
悠理はこの日、実里に遅れることわずかで墓地に辿り着いた。ここは海沿いで眺めも良い場所だし、陽当たりも良い。わずか十九歳で逝った早妃が永久(とわ)の眠りにつくにはふさわしい場所だ。
悠理自身は無宗教で、父は小さな仏壇を祀っていたから、実家は仏教なのだろう。だが、短い人生で色々ありすぎたせいか、神仏に頼るという思考など、とうに棄てた。
早妃は個人的にキリスト教を信奉していたし、時には近くの教会の礼拝にも参加することもあった。それなら、彼女の望むやり方で葬式をしてやれば良いと思った。
早妃の墓の手前まで来た時、彼は墓前に先客がいることに気づいた。相手は悠理の存在には気づいてはおらず、一心に祈っている。
悠理は他の墓の影から、ずっとその様子を見ていた。しばらくして墓参者が立ち上がり、漸くその横顔が見えた。
そのときの彼の愕きは生半ではなかった。
何と墓参に訪れていたのは入倉実里だったのである。三週間ほど前に見たときより、お腹は更に大きくなっている。あの中に我が子がいるのだ―と思うと、感無量で胸が熱くなった。
実里には完全に拒絶されたが、こうして遠くから我が子を見守るくらいは許されるだろう。
彼は今更ながらに気づいた。早妃が亡くなってからというもの、彼は月命日には必ずこうして墓参りに来た。不思議なことに、大抵、先客があったらしく、まだ咲き誇る百合の花束が供えられていた。
早妃の両親だとは到底、思えなかった。悠理と違って彼女の義父と母親はまだ健在ではあるものの、葬式の日時を知らせても顔も見せなかったような両親である。
誰か友達か知り合いと考えるのが妥当であったが、キャバクラを辞めてから早妃はキャバ嬢時代の友達には逢いたがらなくなった。
だとすれば、友達関係というのもあまり考えられない。早妃の好きだった百合の花を持って毎月必ず律儀に訪れる人、その人がそも誰なのか。
悠理はずっと知りたいと願っていた。逢って、その心優しい人に心から礼を言いたいと思っていたのだ。それが、よもや実里であったとは!
声をかけようかどうしようか迷った。また、あんな恐怖と怯えを宿した眼で見られるかと思うと、このまま顔を合わせない方が良いのかもしれないと思えてくる。
悠理はこの日、実里に遅れることわずかで墓地に辿り着いた。ここは海沿いで眺めも良い場所だし、陽当たりも良い。わずか十九歳で逝った早妃が永久(とわ)の眠りにつくにはふさわしい場所だ。
悠理自身は無宗教で、父は小さな仏壇を祀っていたから、実家は仏教なのだろう。だが、短い人生で色々ありすぎたせいか、神仏に頼るという思考など、とうに棄てた。
早妃は個人的にキリスト教を信奉していたし、時には近くの教会の礼拝にも参加することもあった。それなら、彼女の望むやり方で葬式をしてやれば良いと思った。
早妃の墓の手前まで来た時、彼は墓前に先客がいることに気づいた。相手は悠理の存在には気づいてはおらず、一心に祈っている。
悠理は他の墓の影から、ずっとその様子を見ていた。しばらくして墓参者が立ち上がり、漸くその横顔が見えた。
そのときの彼の愕きは生半ではなかった。
何と墓参に訪れていたのは入倉実里だったのである。三週間ほど前に見たときより、お腹は更に大きくなっている。あの中に我が子がいるのだ―と思うと、感無量で胸が熱くなった。
実里には完全に拒絶されたが、こうして遠くから我が子を見守るくらいは許されるだろう。
彼は今更ながらに気づいた。早妃が亡くなってからというもの、彼は月命日には必ずこうして墓参りに来た。不思議なことに、大抵、先客があったらしく、まだ咲き誇る百合の花束が供えられていた。
早妃の両親だとは到底、思えなかった。悠理と違って彼女の義父と母親はまだ健在ではあるものの、葬式の日時を知らせても顔も見せなかったような両親である。
誰か友達か知り合いと考えるのが妥当であったが、キャバクラを辞めてから早妃はキャバ嬢時代の友達には逢いたがらなくなった。
だとすれば、友達関係というのもあまり考えられない。早妃の好きだった百合の花を持って毎月必ず律儀に訪れる人、その人がそも誰なのか。
悠理はずっと知りたいと願っていた。逢って、その心優しい人に心から礼を言いたいと思っていたのだ。それが、よもや実里であったとは!
声をかけようかどうしようか迷った。また、あんな恐怖と怯えを宿した眼で見られるかと思うと、このまま顔を合わせない方が良いのかもしれないと思えてくる。