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My Godness~俺の女神~

第7章 ♯Pray(祈り)♯

 彼女が早妃を轢いたと知りながら、悠理は次第に実里の人柄に魅せられていった。実里が彼の子を宿したと知った時、もしかしたら、親子三人で暮らせるかもしれないなどと馬鹿げた空想を夢見てしまったほどに。
 むろん、これは、まだ愛とか恋と呼べる段階のものではない。しかし、芽生えたこの感情が少しずつ育っていけば、いずれは恋になり得る可能性のあるものではあった。
 苦しげな声が聞こえて、彼は首を振った。
 今は女々しい物想いに浸っているときではない。
 冬だというのに、実里は脂汗をかいている。これはただ事ではない。
「お願いです、助けて。赤ちゃんが、赤ちゃんが生まれそうなんです」
 息も止まりそうな苦しみに喘いでいるのに、お腹の赤ん坊のことばかりを気にしている。それがいじらしくもあり、哀れでもあった。
 意識は朦朧としているのか、実里の眼は虚ろだ。
「おい、しっかりしろ、眼を開けろ。眼を開けてくれ」
 悠理の叫びも空しく、実里はついにそれきり意識を失った。

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