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My Godness~俺の女神~

第7章 ♯Pray(祈り)♯

 嫌だ、また、大切な人間が死ぬのなんて、耐えられない。
 神さま、どうか俺の子どもと子どもを生んでくれようとしている女を―実里を助けてくれ。
 けして信心深いどころか、全くの無信心であった自分がここまで神に真剣に祈ることがあるとは。彼は自分でも信じられなかった。
 それからですら、随分と長い時間が流れたように思えた。
 ピチュピュと気の早い雀のさえずりが聞こえ始めたかと思う頃、悠理はハッと弾かれたように顔を上げた。
 わずかな間、うとうとしていたらしい。
―実里は、実里はどうなったんだ?
 慌てて立ち上がりかけたその時、静まり返った早朝の空気を底から震わせるように、力強い産声が響き渡った。
「や、やった」
 悠理は思わず叫び、ガッツポーズをした。
 再び分娩室が騒がしくなり、ほどなくして年配の看護士が白いおくるみにくるまれた赤ん坊を抱いて出てきた。
 夜中に取り乱す悠理を励ましてくれたあの看護士だ。
「おめでとうございます。2,200グラムの可愛い女の子ですよ。少し早めに生まれたので保育器には入りますけど、元気に育ちますから、安心して」
「―」
 声が出なかった。様々な想いが一挙に渦巻いて、ぴったりの言葉が見つからない。
「ほら、新米お父さん、抱いてご覧なさい」
 赤児を渡され、悠理はおっかなびっくり危なげな手つきで抱いた。
「ああ、そんなに力を込めなくても大丈夫、赤ちゃんは見かけ以上に力強いんですから」
 悠理は言葉もなく、無心に眼を瞑る我が子を見つめた。小さな小さな手に自分の人差し指を握らせると、存外に強い力で握りしめてくる。
「本当ですね。結構、力が強いや、こいつ」
 悠理の頬をひとすじの涙が流れ落ちた。
「それで、母親の方はどうですか?」
 一瞬、看護士が首を傾げ、ああと頷いた。
「奥さんのこと?」
 この際、仕方ない。悠理は頷いた。
「はい、家内です」

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