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My Godness~俺の女神~

第2章 ♯Accident♯

 この企画が少なくとも軌道に乗るまでは、結婚なんて考えられるはずもない。この企画には、実里のすべてがかかっているのだから。
 潤平が言うには、何でも今年の秋にニューヨーク支社への出向が決まったという。そこで何年か勤め上げて本社勤務に戻れば、そのときは間違いなく栄転が約束されている。
 しかし、この出向には一つの条件があった。出向する者は既婚者であるということ。現地では関係者同士―会社ぐるみの付き合いが盛んで、様々なレセプションが催されるのが慣習であり、そのためには夫人同伴でなければならないというのが理由であった。
 まあ、言ってみれば、潤平が実里との結婚を決めたのも、その出向話があってこそではあった。つまりは、必要に迫られて決断したと言っても良い。
 正直、実里には、あまり嬉しい話ではなかった。いや、彼女だけでなく女にとっては皆、同様だろう。
 実里は即答は避けた。それが、そのときの彼女に出せる精一杯の応えであったからだ。
―少し考えさせて。
 潤平は考えもしなかった応えを聞かされたとでも言いたげに、露骨に不満を示した。
―何でだ? お前だって、俺からのプロポーズを待っていたんじゃないのか?
 そのいかにも自信家の彼らしい物言いに、実里もカッと頭に血が上った。
―なに、その言い方。それでは言わせて貰いますけど、潤平さんだって、二ユーヨーク出向の話がなければ、私と結婚しようだなんて考えもしなかったでしょ。
 こうなると、売り言葉に買い言葉である。
その後、二人は無意味な言葉の応酬を繰り返した挙げ句、気まずいままだった。実里は潤平の運転するセダンで自宅前まで送って貰ったが、車を降りるまで二人ともにひと言も喋らなかった。
 それが、今から一週間前のことになる。更に追い打ちをかけるような出来事があった。
 昨夜、潤平からメールがあったのだ。あの夜から一週間、電話どころかメールもない状態が続いていた。
―そろそろ頭が冷えた頃だろう? 良い加減に賢くなれよ。俺と仕事とどっちが大事なんだ?             潤平
あまりにも傲岸なというのか、自分本位の内容に、実里はかえって心が冷えてゆくばかりだった。

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