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My Godness~俺の女神~

第2章 ♯Accident♯

 実里は彼にも頭を下げ、踵を返した。実のところ、自分にできることなど何一つないと判っていた。自分という存在は、あの悠理という男や亡くなった妻に対しては、ただ厭わしい存在であるだけ。
 自分がこれほど無力で惨めに、罪深く思えたことはなかった。病院の前でタクシーを拾う。後部座席のシートに深々と背をもたれかけさせた時、改めて、涙が滲んできた。
 一体、自分は何ということをしでかしてしまったのか。
―早妃、早妃ィ。
 妻を呼ぶ男の声が今も耳奥に灼きついて離れない。
 続いてフィルムを再現するかのように、息絶えた妊婦に取り縋って泣く男の姿がフラッシュ・バックした。
 実里は両手で顔を覆い、低い嗚咽を漏らした。タクシーの初老の運転手がちらと振り返り、後は何も見なかったように運転してくれたことも全く気づかないでいた。

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