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My Godness~俺の女神~

第3章 ♯Vengeance(復讐)♯

「実は俺もあれから気になって警察に電話してみたんだ。まっ、いずれ捜査当局の方からもお前に直接、連絡はあるだろうがな。取り調べを担当した刑事がぼやいてたぜ。お前の携帯に何遍電話しても、電源が切られてるって。事故の翌日、彼女に事情聴取をしたところ、やはり、早妃さんが一方的にあの人の車の前に飛び出してきたということらしい。それとは別に行った現場検証や目撃者の証言でも裏付けは取れたそうだ」
「目撃者? そのときの様子を見てたヤツがいるのか?」
 ああ、と、柊は頷いた。
「雨が小降りになったので、近くの自販機までジュースを買いに出かけた近所の大学生がいたとのことだよ。帰りに丁度、現場を通り掛かって、事故の一部始終を目撃したそうだ。彼の証言では確かに早妃さんの方が先に路上の真ん中に飛び出して、車は慌てて急ブレーキを踏んだのに間に合わなかったと」
「そんなのはデタラメだ」
 悠理は低い声で言った。
「悠理、そんなはずは―」
 言いかけた柊に、悠理は叫ぶ。
「お前もだ柊、何で、あんな見も知らない女をそんなに庇うんだ? お前もその目撃者とやらも警察とグルになって嘘八百を並べ立ててるんだろ」
 柊の濃い男らしい眉が少しつり上がった。
「馬鹿言うなよ。何で俺が嘘を言う必要がある?」
 悠理が掬い上げるような眼で柊を見た。
「なら、もし仮に真琴ちゃんが同じ目に遭ったら、どうするんだ?」
 真琴というのは、柊が三ヶ月前に別れた元カノである。二年付き合って、柊はベタ惚れだったのに、真琴に同じ歳の彼氏ができて、あっさりフラレてしまったのだ。真琴は柊よりも八つも下の女子高生だった。
「―」
 黙り込んだ柊をちらりと見、悠理が勝ち誇ったように言う。
「お前の大切な真琴ちゃんが早妃と同じように車に撥ねられて死んじまっても、お前はそんな物分かりの良いことが言えるのか!?」
 柊はしばらく考え込んでいたかと思うと、きっぱりと言った。
「ああ、俺なら言えるね」
 悠理がフと馬鹿にしたように鼻を鳴らした。

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