My Godness~俺の女神~
第3章 ♯Vengeance(復讐)♯
早妃の方が飛び出してきたという話が事実だとして、雨のせいで道は滑りやすくなり、ブレーキをかけても停車しにくい状況であったはずだ。おまけに、雨と暗闇のせいで、視界はきかず、車の中から前方を見るのは晴れているときよりも格段に難しい。
あの界隈は静かな住宅街で、昼間ですら人通りはない。ましてや、あの時間帯に目撃者がいたとすれば、あの女はよほどの幸運に恵まれていたと見える。見通しの悪い狭い道に所々、ポツンと街灯が立っているだけで殆ど明かりらしいものはない淋しい場所だ。
認めたくはないが、すべてが事故の起こりやすい状況であった。そんな時間に何故、早妃があの現場にいたのか? 早妃は妊娠中であり、切迫早産でずっと自宅安静をしていたというのに。本来ならば、早妃があそこにいたということ自体が解せないのだ。
悠理の疑問は直に解消された。
悶々とする悠理の耳を、柊の静かな声が打った。
「そのこともちゃんと警察は調べ上げてたよ」
悠理がハッと顔を上げた。柊は大きく頷いた。
「早妃さんはお前を迎えに行こうとしていたんだ」
「早妃が―俺を?」
衝撃に心臓が止まりそうになる。
「悠理、あの日は傘を持たずに家を出ただろ? だから、彼女は気になって仕方なかった。お前のことが心配で仕方なかったから、傘二つを持ってアパートを出たんだ。それで、あの事故が起きた」
悠理はしばらくの間、言葉を上手く発せられなかった。様々な想いが一挙に溢れ出て、言葉にならない。
そんな悠理を痛ましげに見つめ、柊が言い添える。
「あの日の夕方、六時四十分頃に、アパートの管理人さんが早妃さんに逢ってる。ビニール傘を二つ大切そうに抱えていたと警察に証言したそうだよ。そんな身体でどこに行くのか、寝てなくちゃ駄目じゃないのかと言ったら、笑って言ったらしい」
―これから主人を迎えに行ってきます。こんな雨では困ってると思うんで。
そのひと言が悠理の胸を鋭く刺し貫いた。
ああ、何てこった。それなら、早妃を殺したのは、彼女を撥ねたあの女だけじゃない、俺だって、その原因になってるってことじゃないか!
あの界隈は静かな住宅街で、昼間ですら人通りはない。ましてや、あの時間帯に目撃者がいたとすれば、あの女はよほどの幸運に恵まれていたと見える。見通しの悪い狭い道に所々、ポツンと街灯が立っているだけで殆ど明かりらしいものはない淋しい場所だ。
認めたくはないが、すべてが事故の起こりやすい状況であった。そんな時間に何故、早妃があの現場にいたのか? 早妃は妊娠中であり、切迫早産でずっと自宅安静をしていたというのに。本来ならば、早妃があそこにいたということ自体が解せないのだ。
悠理の疑問は直に解消された。
悶々とする悠理の耳を、柊の静かな声が打った。
「そのこともちゃんと警察は調べ上げてたよ」
悠理がハッと顔を上げた。柊は大きく頷いた。
「早妃さんはお前を迎えに行こうとしていたんだ」
「早妃が―俺を?」
衝撃に心臓が止まりそうになる。
「悠理、あの日は傘を持たずに家を出ただろ? だから、彼女は気になって仕方なかった。お前のことが心配で仕方なかったから、傘二つを持ってアパートを出たんだ。それで、あの事故が起きた」
悠理はしばらくの間、言葉を上手く発せられなかった。様々な想いが一挙に溢れ出て、言葉にならない。
そんな悠理を痛ましげに見つめ、柊が言い添える。
「あの日の夕方、六時四十分頃に、アパートの管理人さんが早妃さんに逢ってる。ビニール傘を二つ大切そうに抱えていたと警察に証言したそうだよ。そんな身体でどこに行くのか、寝てなくちゃ駄目じゃないのかと言ったら、笑って言ったらしい」
―これから主人を迎えに行ってきます。こんな雨では困ってると思うんで。
そのひと言が悠理の胸を鋭く刺し貫いた。
ああ、何てこった。それなら、早妃を殺したのは、彼女を撥ねたあの女だけじゃない、俺だって、その原因になってるってことじゃないか!