My Godness~俺の女神~
第1章 Prologue~序章~
殆どのホストに特定の彼女がいるから、じゃあ、何で客と寝るの? と訊かれたら、そりゃ、やっぱり愉しみたいとかいうのではない。大体、自分の母親のような歳の女とどうやって愉しめって?
金、金が欲しいからに決まっている。ただキスや手を握らせるだけでもかなりの金をふんだくるけど、その金はかなり店の方がピンハネするからね。その点、アフターで入ってくる金は全部俺たちの手に入る。だから、悪い顔もせず親ほども歳の違うおばさんの相手をする。
「悠理クンに逢うから、新しい香水つけてみたんだけど、どうかしら?」
上目遣いにあからさまな媚を含む眼で掬い上げるように見つめられ、俺は顔が引きつりそうになるのを必死で堪えた。ひと月前に付けてた香水の方がまだマシだったよ、とは口が裂けても言えない。
俺はできるだけ笑顔が自然に見えるように祈りながら言った。
「この前のも良い感じでしたけど、今日のはまた格段に良いですね。何かこう、花の香りをイメージさせるようで」
花は花でも、反吐が出そうな毒花ですけど。
と、心の中で余計なひとことを付け加えた。
「悠理君に一ヶ月ぶりに逢うから、気合いを入れてシャネルを買ったの。褒めて貰えて良かったわぁ」
と、外見はともかく、大袈裟な身振り手振りだけは十代の女子高生のような女を俺は冷めた眼で見つめる。
「俺に逢うから、わざわざ? 実沙さん、そんな男を歓ばせること、言いっこなしですよ~。そんな可愛い科白を聞いたら、俺、本気になっちゃうかもしれませんよ?」
こんな心にもない科白を口にするときの自分がイヤで堪らない。
が、流石に、女もこの科白を真に受けるほど世間知らずではない。五十二歳なりの分別は持ち合わせている。
「まあ、そんなお世辞なんて、こんなおばさんに言う必要はないのよ。私はここに来て、悠理君の顔を見るだけで幸せになれるんだから」
相手は俺の言葉を信じてはいないようだ。
俺はもっともらしく見える笑顔―とびきりの微笑で更にとどめを刺す。大概の女はこれでイチコロだ。この笑顔が何よりの武器になることを、俺は四年のホスト勤めでイヤになるくらい学んだ。
金、金が欲しいからに決まっている。ただキスや手を握らせるだけでもかなりの金をふんだくるけど、その金はかなり店の方がピンハネするからね。その点、アフターで入ってくる金は全部俺たちの手に入る。だから、悪い顔もせず親ほども歳の違うおばさんの相手をする。
「悠理クンに逢うから、新しい香水つけてみたんだけど、どうかしら?」
上目遣いにあからさまな媚を含む眼で掬い上げるように見つめられ、俺は顔が引きつりそうになるのを必死で堪えた。ひと月前に付けてた香水の方がまだマシだったよ、とは口が裂けても言えない。
俺はできるだけ笑顔が自然に見えるように祈りながら言った。
「この前のも良い感じでしたけど、今日のはまた格段に良いですね。何かこう、花の香りをイメージさせるようで」
花は花でも、反吐が出そうな毒花ですけど。
と、心の中で余計なひとことを付け加えた。
「悠理君に一ヶ月ぶりに逢うから、気合いを入れてシャネルを買ったの。褒めて貰えて良かったわぁ」
と、外見はともかく、大袈裟な身振り手振りだけは十代の女子高生のような女を俺は冷めた眼で見つめる。
「俺に逢うから、わざわざ? 実沙さん、そんな男を歓ばせること、言いっこなしですよ~。そんな可愛い科白を聞いたら、俺、本気になっちゃうかもしれませんよ?」
こんな心にもない科白を口にするときの自分がイヤで堪らない。
が、流石に、女もこの科白を真に受けるほど世間知らずではない。五十二歳なりの分別は持ち合わせている。
「まあ、そんなお世辞なんて、こんなおばさんに言う必要はないのよ。私はここに来て、悠理君の顔を見るだけで幸せになれるんだから」
相手は俺の言葉を信じてはいないようだ。
俺はもっともらしく見える笑顔―とびきりの微笑で更にとどめを刺す。大概の女はこれでイチコロだ。この笑顔が何よりの武器になることを、俺は四年のホスト勤めでイヤになるくらい学んだ。