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My Godness~俺の女神~

第1章 Prologue~序章~

「実沙さんって、俺と同じ歳の息子さんがいるんでしょ? 到底、そんな歳には見えませんって」
「まァ、口がうまいんだから」
 と言いながらも、満更、悪い気はしないといった表情である。
 ああ、反吐が出そうだ。元々、俺は息をするように嘘をつくのが得意でもないし、好きでもない。
「うちのドラ息子とは大違い、悠理クンって、可愛いわ。ほら、俳優のむか、そう、向井理に似てるわよねえ」
 実はしょっちゅう客からも言われることだが、ここはむろん、素知らぬ顔を通す。
 俺はわざとらしく愕いた風を装った。
「ええー、俺と向井さんじゃ、それこそ月とスッポンっすよお」
「あらあ、向井くんて、クールに見えて、意外に情熱的でナイーブそうなところ? 相反する魅力っていうのかしら、そういうのがあるじゃない。悠理クン、もちろんルックスも似てるけど、そういう内面的なものが何か似てるような気がするのよぅ」
「ハハ、そうっスか? まあ、そう言って貰えて悪い気はしませんけどね」
 俺は照れたように頭をかき、はにかんだ風に笑って見せた。
「ホント、うちの息子も悠理クンみたいにイケメンだったらねぇ。うちの子は亭主に似て、ルックスはからきし駄目なのよ。もう冬眠中のカバみたいなの」
「冬眠中のカバ、ですか?」
「そうよ、見た目も中身も面白み一つないわぁ」
「いえ、実沙さんの息子さんなら、きっと実沙さんに似て今風のイケメンに違いないですよ。俺なんか足許にも寄れないですって」
「フフ、本当に口が上手なのね」
 馴れ馴れしく肩に手を置き、耳許で囁く。
「ねえ、この時間が終わったら、アフタで私とどこかに行かない? できれば悠理クンと二人だけになれる場所が良いわ」
 おっと、この女もとうとう来たか。俺は鳥肌立ちそうになるのを我慢して、やんわりと手を払う。
「俺も是非、そうお願いしたいところなんですけど、店の規則でそれは禁止されてるんで」
「あらぁ、でも、どうせ皆やってることでしょ。貢(みつぐ)クンや聯(れん)クンなんて毎度のことじゃない?」

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