My Godness~俺の女神~
第3章 ♯Vengeance(復讐)♯
この声は、数回聞いただけの悠理のものとは違う。凍てついた氷のような声ではなく、もっと温かみのある人間らしい声だ。
―はい。その―、何と言ったら良いのかな。溝口悠理の友人です。
やはり、と、実里の中で再び疑念と警戒が兆した。悠理本人からでなくとも、彼に拘わりのある人物からの電話なんて、できればご免蒙りたい。
―それで、私に何かご用でしょうか?
用心しながら問うと、片岡柊路と名乗る男は控えめに言った。
―お逢いして、お話ししたいことがあるんです。明日の夕方、少しの時間で良いから、逢えませんか?
実里は躊躇った。あの男の友達だなんて、二人きりで逢わない方が良いに決まっている。その時、実里の中で閃くものがあった。
―もしかして、片岡さんって、あの日、病院へ溝口さんと一緒に来られていた?
―ええ、そうです。
相手の声が少し活気を帯びた。
あの男は悪い人ではない。ともすれば感情のままに実里に衝突しようとする悠理を宥め、実里を庇いさえしてくれた。
―判りました。時間と場所を教えてください。
短いやりとりの後、柊路はすぐに電話を切った。
翌日の夕刻、実里は柊路の指定した喫茶店にいた。そこは会社からも近いF駅前の小さな店である。
二人きりではなく、人眼の多い駅前の喫茶店を選んだのも柊路の思慮深さを物語っている。
「済みません、急に呼び出したりして」
実里が曇りガラスの扉を開けた時、柊路は既に奥まったテーブル席で手を振っていた。「いいえ、お気になさらないでください。ですが、何故、急に?」
柊路はここまで来ても躊躇うことがあるのか、逡巡する様子を見せた。それから覚悟を決めたようにひと息に言う。
「最近、何か身の回りで変わったことはありませんか?」
「変わった―こと、ですか」
やはり真っ先に浮かんだのは、昨日の出来事だ。しかし、そのことを当の悠理の親友であるこの男に打ち明けても良いものかどうか、即断はできかねた。
―はい。その―、何と言ったら良いのかな。溝口悠理の友人です。
やはり、と、実里の中で再び疑念と警戒が兆した。悠理本人からでなくとも、彼に拘わりのある人物からの電話なんて、できればご免蒙りたい。
―それで、私に何かご用でしょうか?
用心しながら問うと、片岡柊路と名乗る男は控えめに言った。
―お逢いして、お話ししたいことがあるんです。明日の夕方、少しの時間で良いから、逢えませんか?
実里は躊躇った。あの男の友達だなんて、二人きりで逢わない方が良いに決まっている。その時、実里の中で閃くものがあった。
―もしかして、片岡さんって、あの日、病院へ溝口さんと一緒に来られていた?
―ええ、そうです。
相手の声が少し活気を帯びた。
あの男は悪い人ではない。ともすれば感情のままに実里に衝突しようとする悠理を宥め、実里を庇いさえしてくれた。
―判りました。時間と場所を教えてください。
短いやりとりの後、柊路はすぐに電話を切った。
翌日の夕刻、実里は柊路の指定した喫茶店にいた。そこは会社からも近いF駅前の小さな店である。
二人きりではなく、人眼の多い駅前の喫茶店を選んだのも柊路の思慮深さを物語っている。
「済みません、急に呼び出したりして」
実里が曇りガラスの扉を開けた時、柊路は既に奥まったテーブル席で手を振っていた。「いいえ、お気になさらないでください。ですが、何故、急に?」
柊路はここまで来ても躊躇うことがあるのか、逡巡する様子を見せた。それから覚悟を決めたようにひと息に言う。
「最近、何か身の回りで変わったことはありませんか?」
「変わった―こと、ですか」
やはり真っ先に浮かんだのは、昨日の出来事だ。しかし、そのことを当の悠理の親友であるこの男に打ち明けても良いものかどうか、即断はできかねた。