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My Godness~俺の女神~

第3章 ♯Vengeance(復讐)♯

「だけど、それはけして許される行為じゃない。先日、悠理に逢いました。勤め先もずっと休んでるし、携帯にかけても通じないしってんで、気になって様子見にいったんです。そうしたら、またこういう言い方はどうかと思いますが」
 柊路は小首を傾げ、続けた。
「まるでドラッグをやったヤツのように訳が判らなくなってるんですよ。急に凶暴になったかと思うと、次の瞬間には嘘みたいに大人しくなって、どん底まで落ち込む。要するに、浮き沈みというか感情の起伏が異常なくらい激しくなるんです」
「ドラッグ―」
 実里には、眼前の男の口から次々と飛び出す言葉が異国の別世界のもののように聞こえた。
 柊路が薄く笑む。
「あなたのような根っからのお嬢さまには縁もゆかりもない世界のことでしょうけど。俺たちがいる世界では、さほど珍しくはありませんよ」
 彼が頭をかいた。
「ああ、地が出ちまったな。済みません。あまり慣れてない言葉遣いしてたもんで。普段どおりでも良いですか?」
 実里は頷いた。
「気にしないでください」
 少し悩んだ挙げ句、思い切って訊ねてみた。
「あの、失礼かもしれませんが、何のお仕事を?」
 柊路が笑った。
「知りたいですか? あまり聞いても、良い気分にはなれませんよ。ホストですよ、俺たち」
 〝俺たち〟というのがこの男とあの悠理を指すのだとは判る。小説や映画、ドラマでは耳にしたことはあるけれど、現実に本物のホストに出逢ったことはない―それが実里の生きてきた世界の限界であった。
 実里の胸中を見透かすかのように、柊路がやや自嘲気味に笑った。
「軽蔑する?」
「いいえ!」
 即座に大声で言ってしまい、実里は慌てて口を押さえた。

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