My Godness~俺の女神~
第1章 Prologue~序章~
貢と聯というのは、この店のホスト仲間だ。俺が以前、接客中だった時、この女の相手を一、二度したことがある。
俺はわざとらしく拗ねた声を出した。
「実沙さん、俺がいるのに、貢や聯とアフタに行ったの?」
俺の気を惹くことができた―と女は思い込んだらしい。忽ち嬉しげに顔を綻ばせた。
「あらぁ、私には悠理クンがいるのに、何で他の子とアフターに行ったりするものですか。私には悠理クンだけ」
女が更に口を近づけ、生暖かい吐息が直接、耳朶に吹きかけられる。俺は全身、総毛立った。
「ちょっとだけ、悠理クンに焼きもちを焼かせてみたかったの。フフ、嫉妬する悠理クンも可愛いわ」
何という救いがたい勘違い女!
俺は心の中で毒づき、それでも極上の笑みは絶やさなかった。
「お袋の具合が良くないもんで。今日は早く帰らないといけないんです」
女はマジで心配そうな顔をした。こんな時、俺は人の好いこの中年女を騙している自分がこの世の中で最低最悪の男だと思わずにはいられない。
この女は確かに恋愛対象にはならないが、それは何も女のせいではない。彼女はただ日頃、満たされない心の隙間を埋めたくて、ここに来ているだけなのに。
この女だって、淋しいに違いないのだ。ここに来る女たちは皆、幸せではない。第一、幸せならば、こんなところには来ないだろう。少なくとも、表面的には満たされた生活をしていながらも、心は飢えて渇いた哀れな女たち。
「まあ、それは心配ね」
女は珍しく少し考え込む素振りを見せた。
「悠里クンのお母さまはお幾つ?」
「四十四ですけど?」
女は露骨に愕いた顔をした。
「まあ、若いのね、私より八つも下なの」
母親が四十四だというのは本当のことだ。ただ、今も生きていればの話だが。
大体、男を作って幼稚園児の息子を一人、ほっぽり出して家を出ていったような女、今更、母親だなんて思いたくもないし、思ったこともない。親父はあの女のせいで、一生を棒に振った。毎日、日雇いの工事現場で汗水垂らして働いて、挙げ句に過労死で呆気なく死んだ。それが今から数年前のことだ。
俺はわざとらしく拗ねた声を出した。
「実沙さん、俺がいるのに、貢や聯とアフタに行ったの?」
俺の気を惹くことができた―と女は思い込んだらしい。忽ち嬉しげに顔を綻ばせた。
「あらぁ、私には悠理クンがいるのに、何で他の子とアフターに行ったりするものですか。私には悠理クンだけ」
女が更に口を近づけ、生暖かい吐息が直接、耳朶に吹きかけられる。俺は全身、総毛立った。
「ちょっとだけ、悠理クンに焼きもちを焼かせてみたかったの。フフ、嫉妬する悠理クンも可愛いわ」
何という救いがたい勘違い女!
俺は心の中で毒づき、それでも極上の笑みは絶やさなかった。
「お袋の具合が良くないもんで。今日は早く帰らないといけないんです」
女はマジで心配そうな顔をした。こんな時、俺は人の好いこの中年女を騙している自分がこの世の中で最低最悪の男だと思わずにはいられない。
この女は確かに恋愛対象にはならないが、それは何も女のせいではない。彼女はただ日頃、満たされない心の隙間を埋めたくて、ここに来ているだけなのに。
この女だって、淋しいに違いないのだ。ここに来る女たちは皆、幸せではない。第一、幸せならば、こんなところには来ないだろう。少なくとも、表面的には満たされた生活をしていながらも、心は飢えて渇いた哀れな女たち。
「まあ、それは心配ね」
女は珍しく少し考え込む素振りを見せた。
「悠里クンのお母さまはお幾つ?」
「四十四ですけど?」
女は露骨に愕いた顔をした。
「まあ、若いのね、私より八つも下なの」
母親が四十四だというのは本当のことだ。ただ、今も生きていればの話だが。
大体、男を作って幼稚園児の息子を一人、ほっぽり出して家を出ていったような女、今更、母親だなんて思いたくもないし、思ったこともない。親父はあの女のせいで、一生を棒に振った。毎日、日雇いの工事現場で汗水垂らして働いて、挙げ句に過労死で呆気なく死んだ。それが今から数年前のことだ。