My Godness~俺の女神~
第4章 ♯Stalker(忍び寄る影)♯
だが、この場で別離を切り出すつもりがない以上、ここは二人の関係を波立たせるような言動は慎むべきだ。
よほど〝今夜はもう結構よ〟と言おうとしたが、思い直して微笑んだ。
「ありがとう。それでは、お言葉に甘えて―」
メニューを開いたまさにその瞬間、店の入り口がざわざわとざわめくのが耳に入った。
次いで罵声が聞こえてくる。
ふいの侵入者が何やら喚いているようだが、奥まったここまでは詳細は判らない。
「何だ? 皆、静かに食事を愉しんでるのに」
潤平が不機嫌そうに振り返った。
と、白と黒のお仕着せを身につけた若いウエイターが慌てて近寄ってきた。
「お客さま、お食事中のところを真に申し訳ございませんが、溝口さまとおっしゃる方がご相席なさりたいとたってのご所望でして」
ウエイターの言葉が終わらない中に、あの男―溝口悠理がゆっくりとこちらに向かって歩いてきた。
「何だ、君は」
潤平が眉をひそめても、悠理は平然としている。
「ホウ、今夜は恋人同伴でお楽しみですか、お嬢さま。こんな高い洒落た店は俺なんかには一生、縁はなさそうですがね」
悠理は揶揄するように言うと、空いていた椅子の一つに腰掛け、悠然と長い足を組んだ。
「溝口さん、話があるのなら、どこか別の場所で―」
言いかけた実里を制し、潤平が態度だけは慇懃に言った。
「これは一体、どういうことかな。君は何者なんだ」
「俺? 俺は溝口悠理」
暗に、そんなことも知らないのか? と馬鹿にしたように言うのに、潤平の白い面が怒りにうっすらと染まった。
「実里、この男は?」
悠理では話にならないと考えたのだろう、潤平が実里に確認するような視線をよこす。
「この人は」
言いかけた時、悠理が突然、ダンと大きな音を立ててテーブルを拳で打ちつけた。
「あんたらな、俺の名前っつうか、溝口と聞いて、何とも思わないどころか、思い出しもしないってところが、はや頭がイカレちまってるとしか思えねえんだよ」
「なっ」
潤平は怒りのあまり、声を震わせた。
よほど〝今夜はもう結構よ〟と言おうとしたが、思い直して微笑んだ。
「ありがとう。それでは、お言葉に甘えて―」
メニューを開いたまさにその瞬間、店の入り口がざわざわとざわめくのが耳に入った。
次いで罵声が聞こえてくる。
ふいの侵入者が何やら喚いているようだが、奥まったここまでは詳細は判らない。
「何だ? 皆、静かに食事を愉しんでるのに」
潤平が不機嫌そうに振り返った。
と、白と黒のお仕着せを身につけた若いウエイターが慌てて近寄ってきた。
「お客さま、お食事中のところを真に申し訳ございませんが、溝口さまとおっしゃる方がご相席なさりたいとたってのご所望でして」
ウエイターの言葉が終わらない中に、あの男―溝口悠理がゆっくりとこちらに向かって歩いてきた。
「何だ、君は」
潤平が眉をひそめても、悠理は平然としている。
「ホウ、今夜は恋人同伴でお楽しみですか、お嬢さま。こんな高い洒落た店は俺なんかには一生、縁はなさそうですがね」
悠理は揶揄するように言うと、空いていた椅子の一つに腰掛け、悠然と長い足を組んだ。
「溝口さん、話があるのなら、どこか別の場所で―」
言いかけた実里を制し、潤平が態度だけは慇懃に言った。
「これは一体、どういうことかな。君は何者なんだ」
「俺? 俺は溝口悠理」
暗に、そんなことも知らないのか? と馬鹿にしたように言うのに、潤平の白い面が怒りにうっすらと染まった。
「実里、この男は?」
悠理では話にならないと考えたのだろう、潤平が実里に確認するような視線をよこす。
「この人は」
言いかけた時、悠理が突然、ダンと大きな音を立ててテーブルを拳で打ちつけた。
「あんたらな、俺の名前っつうか、溝口と聞いて、何とも思わないどころか、思い出しもしないってところが、はや頭がイカレちまってるとしか思えねえんだよ」
「なっ」
潤平は怒りのあまり、声を震わせた。