My Godness~俺の女神~
第4章 ♯Stalker(忍び寄る影)♯
男は実里の口を手のひらで塞いだまま、引きずるようにしてじりじりと進んだ。やがて五十メートルほど来たところで、ふいに男が実里の身体を突き放す。勢い余って、実里はその場に倒れた。慌てて起き上がろうとした身体の上に男が上からのしかかってくる。
眼をまたたかせ、馬乗りになってきた男の顔を認識した瞬間、実里は恐怖に眼を見開いた。
「あ、あなたは―」
あまりの展開に、声が小刻みに震えた。
あろうことか、実里の上にのしかかっているのは溝口悠理であった。
危険な光を放つ瞳がじいっとこちらに向けられている。
「どうして、こんなことを」
弱々しい声で訊ねてみたが、その理由なら訊かずとも判っていた。
復讐―だ。恐らく悠理は自分を殺すつもりに違いない。法的には実里は罪を問われなかったけれど、悠理にしてみれば、到底許し難いことだろう。
いや、むしろ実里が刑事的責任を問われなかったことで、余計に怒りの矛先が向けられたとも考えられる。
男が身を乗り出し、彼の唇と彼女の唇との距離はわずか数センチとなった。
「哀れっぽい声を出せば、俺がお前を許してやるとでも?」
彼の囁きには、官能的で危険極まりない響きがこもっていた。怒りを暴発させないようにと努めているようにも見える。
実里は首を振った。
「生命乞いなんてしません。私を殺したいのなら、殺せば良いでしょう。それで、あなたの気が済むのなら、私は構いません」
どうせ生きていても、苦しみがあるだけだ。これからの長い一生を人を撥ねて殺したという意識を持ち続けて生きてゆくのはあまりに辛すぎる。
実里の言葉に、冷ややかな悠理の口許がほころんだ。
「それはそれは。また何と殊勝なというか潔い心がけだな」
悠理は少し斜に構えた。
「だが、生憎とあんたを殺すつもりはないんだ」
「―?」
実里は悠理を不審げに見つめた。
「まっ、長年付き合った恋人がいるんだから、まさか初めてってわけじゃなかろうし」
眼をまたたかせ、馬乗りになってきた男の顔を認識した瞬間、実里は恐怖に眼を見開いた。
「あ、あなたは―」
あまりの展開に、声が小刻みに震えた。
あろうことか、実里の上にのしかかっているのは溝口悠理であった。
危険な光を放つ瞳がじいっとこちらに向けられている。
「どうして、こんなことを」
弱々しい声で訊ねてみたが、その理由なら訊かずとも判っていた。
復讐―だ。恐らく悠理は自分を殺すつもりに違いない。法的には実里は罪を問われなかったけれど、悠理にしてみれば、到底許し難いことだろう。
いや、むしろ実里が刑事的責任を問われなかったことで、余計に怒りの矛先が向けられたとも考えられる。
男が身を乗り出し、彼の唇と彼女の唇との距離はわずか数センチとなった。
「哀れっぽい声を出せば、俺がお前を許してやるとでも?」
彼の囁きには、官能的で危険極まりない響きがこもっていた。怒りを暴発させないようにと努めているようにも見える。
実里は首を振った。
「生命乞いなんてしません。私を殺したいのなら、殺せば良いでしょう。それで、あなたの気が済むのなら、私は構いません」
どうせ生きていても、苦しみがあるだけだ。これからの長い一生を人を撥ねて殺したという意識を持ち続けて生きてゆくのはあまりに辛すぎる。
実里の言葉に、冷ややかな悠理の口許がほころんだ。
「それはそれは。また何と殊勝なというか潔い心がけだな」
悠理は少し斜に構えた。
「だが、生憎とあんたを殺すつもりはないんだ」
「―?」
実里は悠理を不審げに見つめた。
「まっ、長年付き合った恋人がいるんだから、まさか初めてってわけじゃなかろうし」