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My Godness~俺の女神~

第5章 ♯Detection(発覚)♯

♯Detection(発覚)♯

 昼休みの給湯室は実に騒がしい。仕事からひととき解放された女子社員たちが一斉に溢れ出し、ここにたむろするからだ。
 慎ましい倹約家はここで持参した弁当をちゃっかりひろげている。実里は元来、あまり大勢と群れる質ではなく、大抵は同じ歳の大木ひかると二人で行動することが多い。
 同年といっても、ひかるは四大を出て入社したので、実は実里の方が会社では先輩になる。しかし、付き合いも長い二人は、今では無二の親友と言って良い関係を築いていた。
 二十七歳といえば、微妙な年齢である。もう入社したての若い子とはいえず、かといって三十過ぎた中年女と呼ばれるにはいささか早すぎる。
 この時期になると、同期、或いは同年の女子社員たちは三分の二が退社している。その殆どが結婚を目的とした寿退社だ。もちろん、中には今の職場が合わず同業種で別の会社に移った者もいるし、新たな道を求めて旅立っていった者もいた。
 しかし、いずれも今の自分に満足できず、新たな道へと踏み出したことに変わりはない。その点、男子社員たちは女子と違い、途中で職を変わる者は少なかった。その点はやはり、男にとって仕事は一生のものという考え方がまだまだ日本に根強く残っているからだろう。
 同じ年頃の女子社員たちが次々と結婚して辞めていく中で、実里とひかるだけは相変わらず今の会社でしぶとく頑張っている。
 その日、実里は給湯室に来て、ホッとしていた。しかも幸運なことに、その日はいつになく人がおらず、閑散としている。実里とひかるが入ってきたときには数人の若い子がいたが、入れ替わるように出ていった。何でもフレンチレストランでランチをするのだとはしゃいだ会話の端々から判った。
「良いわねえ。今時の若い子は何をするにも明るくて」
 ひかるが心もち肩を竦める。
 実里はすぐに同意して良いものが判らず、曖昧な笑顔を返した。
「良いんじゃない? しかめっ面しているより、明るい方がまだ良いわよ」
 と、ひかるがプッと吹き出した。
「やだ、なに、それ。鹿田さんのこと言ってるつもり?」

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